経済・外交・安全保障と、我が国のさまざまな課題解決に取り組む高市政権。発足から1ヵ月ほどが経ち、ガソリンの暫定税率の廃止などを進めています。これ以外の物価高対策にも期待がかかる状況です。

高市総理が打ち出そうとしている経済政策のひとつが「給付付き税額控除」です。給付でも減税でもないこの仕組みは、どのようなもので誰にとってメリットがあるのでしょうか。

この記事では、給付付き税額控除の仕組みやメリットを解説します。

1. 給付付き税額控除とは

給付付き税額控除とは、その名のとおり給付と税控除を組み合わせた制度です。基本的には、一律で一定額を減税し、減税しきれない分については、給付金として支給することで家計を支援します。

これまでの給付金のような政策とは異なり制度設計が必要なため、実現までには多少の時間がかかります。しかし、制度を設計している際も物価高は進んでいくでしょう。少しでも早く効果的な政策を国民に届けられるよう、高市総理は所信表明演説で、すでに経済対策の策定に着手するよう各所に指示をしている旨を公表しています。

では、給付付き税額控除は誰にメリットがあるのでしょうか。次章で見ていきましょう。

2. 給付付き税額控除は誰にとってメリットがある?

給付付き税額控除は、誰もが同じ恩恵を受けられるため、多くの人にメリットがあります。なかでもメリットが大きいのは、非課税世帯や低・中所得世帯です。

給付付き税額控除は、前述のとおりまず減税を優先して実施し、引ききれない分については給付することで、納税額が少ない人や非課税の人にも支援をします。10万円控除された場合を例にシミュレーションしてみると、以下のようになります。

給付付き税額控除2/3

給付付き税額控除

出所:LIMO編集部作成

【中・高所得層】

  • 所得税の納税額:30万円(控除額10万円を上回る)
  • 控除・給付の適用:10万円が減税として適用
  • 最終的な効果:納税額が20万円となり、納税負担が軽減される。

【低所得層】

  • 所得税の納税額:8万円(控除額10万円を下回る)
  • 控除・給付の適用:8万円は減税(納税額がゼロに)。残りの2万円を現金給付。
  • 最終的な効果:納税額がゼロになり、さらに2万円が現金で支給される。

【非課税世帯】

  • 所得税の納税額:ゼロ
  • 控除・給付の適用:控除する税金がないため、10万円が全額現金給付される。
  • 最終的な効果:減税の恩恵がなかった層にも、直接的な支援が届く。

控除額10万円の場合、中・高所得層は納税額が減るため、実質的に手取り収入が増えます。低所得層は納める所得税が0円になり、引ききれない分については現金で受取可能です。受け取った現金を日々の支出に充てれば、制度の恩恵をより実感しやすくなるでしょう。

非課税世帯については、そもそも納める所得税がないため、全額現金給付となります。これまでの住民税非課税世帯への給付金と同じように支援を受けられるのです。

このように、給付金税額控除は給付と減税のそれぞれの強みを掛け合わせた制度になっているため、国民誰もが恩恵を受けられるようになっています。

次章では、現金給付との違いや給付がない理由を解説します。

3. 現金給付は「なし」その理由は?

石破前総裁で参議院選挙に臨んだ自由民主党は「全国民2万円、非課税世帯・子育て世帯4万円」の給付金を掲げて臨みましたが、票数は伸びず選挙に敗れる形となりました。これを受けてか、高市総理は給付金政策の撤回を表明しています。

現金給付を撤回した理由としてはさまざまなことが考えられます。たとえば、公平性の問題です。一律給付は、全国民平等に同じ給付金を受け取れる政策ですが、支援がなくても十分に生活できる高所得者層にも給付金がわたります。そのため、本来支援を必要とする人々への支援が不十分になる可能性があるのです。

また、給付の効果自体も疑問視されています。内閣府の調査によれば、2020年の一律給付金の効果は「限定的であった」という結果が出ています。

よって、お金を配ってもその効果は持続的に波及していくとは限らないのです。

ただし、給付付き税額控除においても、減税しきれない分は給付金として支給します。この給付分が貯蓄や投資ではなく消費にまわるかどうかは、制度が実際に運用されていくなかで検証していく必要性があるでしょう。

次章では、課題山積の物価高対策のさらなる一手について解説します。

4. 「物価高対策」次の一手は

前述のとおり、給付付き税額控除は、これから制度設計をしていくため、実現までには多少の時間がかかります。早期に制度公表、実施となるのが理想的ですが、このほかの対策も手を打っておく必要があります。

すでに決定しているのは、ガソリン暫定税率の廃止です。2025年12月31日(軽油取引税は2026年4月1日)をもって廃止されることが正式に決定し、車の使用が日常茶飯事の地方にとっては嬉しい結果となりました。

そして、現在高市政権において争点となっている経済政策としては「年収の壁の引き上げ」と「社会保障改革」が挙げられます。年収の壁のひとつである「103万円の壁」については、2025年度から160万円に引き上げられますが、今後は国民民主党が主張する「178万円」を目指して、さらに議論を続けていくことが想定されます。

社会保障改革については、高市総理が社会保障の負担と在り方を見直すべく、国民会議を設置することを表明しています。私たちが納める社会保険料は、一般的に給与の約15%程度となっており、その負担は決して小さくありません。加えて「賃金が増えれば保険料も増える」という仕組み上、賃上げの恩恵は決して十分とはいえない状況です。

税・社会保障の一体改革をどこまで実現できるかが、これからの物価高対策にもつながっていくでしょう。

5. まとめ

給付付き税額控除は、給付と減税を組み合わせた制度で、誰もが恩恵を受けられるものです。制度設計には時間がかかりますが、仕組みが構築できれば物価高対策として今後も継続的な運用が可能になります。

一方、制度は複雑で給付や減税ほど明確とはいいきれないのがネックです。いかにわかりやすく負担の少ない制度設計ができるかが、ポイントとなるでしょう。

参考資料

石上 ユウキ