4. コラム:老齢年金からも「天引きされるお金」の存在を知っていますか?
公的年金は賃金や物価を考慮して年度ごとに見直しがおこなわれます。
2025年度分は前年度より1.9%引き上げられ、3年連続のプラス改定にはなりました。しかし、「マクロ経済スライド(※)」によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額は目減りしています。物価上昇に年金額が追い付けていないのです。
またシニアの多くは、下記の税や社会保険料を老齢年金からの天引きで納めています。
- 介護保険料
- 公的医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度)の保険料
- 個人住民税および森林環境税
- 所得税および復興特別所得税
年金見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できますが、年金は「額面通りにはもらえない」点は意外な盲点かもしれません。
※マクロ経済スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ
5. まとめにかえて
総務省の家計調査より、標準的な65歳以上の単身無職世帯では、公的年金収入だけでは生活費をカバーできておらず、毎月約2万8000円の赤字が継続的に発生している結果となりました。
この赤字構造は、平均的な支出に対して年金収入が不足していることを示しており、特に介護費用や住居費などのリスクを考慮すると、不足額はさらに膨らむ可能性があります。
老後の年金受給額は、現役時代の厚生年金加入期間や収入水準によって大きな個人差が出ます。公的年金だけを頼りにするのではなく、現役時代からコツコツと資産づくりを継続していくことが大切となるでしょう。
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)や新NISAといった税制優遇制度の活用を検討してみるのも一案ですね。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](2024年)」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 総務省統計局「家計調査報告家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
マネー編集部貯蓄班
