11月5日に、与野党6党でガソリン暫定税率の廃止が正式に決定されました。昨年は与野党が合意できず見送られましたが、今秋に誕生した高市早苗内閣のもと、首相就任からわずか1ヵ月ほどで合意に至りました。
高市政権で期待される経済政策のひとつが「給付付き税額控除」です。高市首相が今秋の総裁選にて提示した政策で、早急に制度設計を進める考えとしています。
しかし、物価高は今もなお続いている状況です。高市首相はなぜスピード感ある一律現金給付ではなく、給付付き税額控除の設計を進めているのでしょうか。この記事では、給付付き税額控除の概要や今後のビジョンを解説します。
1. 給付付き税額控除とは
給付付き税額控除とは、税の控除と現金給付を組み合わせた支援策です。
基本的には減税を優先し、引ききれない分を給付金として支給する形です。欧米各国で導入されており、日本でも旧民主党政権時代あたりから導入が検討されました。
この制度は、所得水準に関係なく、すべての人に同じ水準の減税(または給付)という形で恩恵を提供します。これにより、税金を払っていない層にも支援が行き渡るのが最大の特徴です。たとえば、控除額が5万円の場合を見てみましょう。
- 所得税が10万円の人:5万円全額が差し引かれ、残りの5万円を納税する。
- 所得税が3万円の人:3万円が差し引かれ納税額が0円になり、差額の2万円は給付される。
- 所得税非課税の人:控除額である5万円がそのまま給付される。
控除額が余ることなく、誰もが5万円の減税もしくは給付を受けられるのです。
こうした強みを持つ給付付き税額控除ですが、なぜ高市首相はこの制度設計を急ぐのでしょうか。次章では、給付付き税額控除と対比されやすい「一律現金給付」との違いを解説します。
