3. 給付付き税額控除のビジョン

給付付き税額控除制度が完成すれば、国は物価高対策のプラットフォームとして制度を運用し続けられます。

2024年の定額減税や近年頻発される住民税非課税世帯への給付金は、いずれも1回限りで、場当たり的な措置でした。その都度制度設計をし、地方自治体が申請を受け付ける形だったため、国や自治体職員も疲弊した状況でした。こうした状況を防ぐためにも、高市政権は給付付き税額控除の制度設計を急いでいます。

制度が完成すれば、物価高騰や不況の際に、控除額を設定するだけで全国民へ同時に支援を開始できます。物価高支援のプラットフォームとして制度をつくることで、現在の物価高だけでなく将来の有事に備えようとしているのです。

しかし、給付付き税額控除には課題も存在します。次章で解説します。

4. 給付付き税額控除には課題も

給付付き税額控除は魅力的な制度ですが、乗り越えるべき課題もあります。なかでも「国民の所得や資産をどのように把握するか」は解決しなければなりません。

国民の所得・資産を即座に把握し、支援をするには「マイナンバー制度」の整備が欠かせません。

マイナンバー制度は、当初カードの作成が任意だったものの、健康保険証機能の移行により、事実上所有が求められるものになりました。こうした背景があるからこそ、マイナンバー制度の整備については、丁寧な説明が求められます。

また、複雑な仕組みをどう国民に理解してもらうのかも重要です。給付付き税額控除のルールや仕組みを、さまざまなシーンで広報・伝達することも求められるでしょう。

5. まとめ

給付付き税額控除は、納税額にかかわらず恩恵が受けられる公平な仕組みで、支援が必要な層に手厚いサポートができる合理的な仕組みです。

制度設計には時間がかかることが予想されますが、できる限り早急に設計が進み、物価高対策のインフラ事業となることが期待されます。

参考資料

石上 ユウキ