冬の足音が近づく11月、40代・50代の会社員にとって「老後の厚生年金」は最大の関心事です。モデルケースの平均額は把握していても、「実際みんな、いくらもらっているのか」というリアルな実態は気になるところでしょう。
日本の公的年金は国民年金(1階)と厚生年金(2階)の「2階建て構造」です。最新データによると、厚生年金の平均受給月額は「14万6429円」ですが、受給額の分布を見ると「月額15万円未満」の受給者が全体の約半数(47.6%未満)を占めています。さらに、高齢者世帯の43.4%が公的年金収入のみに頼って生活しているという実態も明らかになりました。
この記事では、厚生年金と国民年金の基本を確認しつつ、平均額の裏にある「リアルな受給額分布」と、シニアの厳しい生活実態を深掘りします。公的年金だけに頼れない時代の将来設計の必要性を、具体的なデータから解説します。
1. 【1階・2階】国民年金と厚生年金の違い:加入対象・保険料・受給額を整理
日本の公的年金制度は、ベースとなる「国民年金(基礎年金)」と、上乗せ部分の「厚生年金」から成り立つため、「2階建て構造」と呼ばれています。
2つの年金制度の基本を、確認していきましょう。
1.1 日本の公的年金制度は2階建て
【1階部分】国民年金(基礎年金)
- 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
- 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
- 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる
※1 国民年金保険料:2025年度月額は1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2025年度月額は6万9308円
【2階部分】厚生年金
- 加入対象:会社員や公務員、またパートなどで特定適用事業所(※3)に働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
- 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
- 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る
2階部分の厚生年金は、会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入します。国民年金と厚生年金では、加入対象や年金保険料の決定方法、そして受給額の計算方法などが異なります。
そのため、老後に受け取る年金額にも、その方の加入状況や収入によって差が生まれます。
また、公的年金額は物価や現役世代の賃金の変動に応じて毎年度見直される仕組みとなっている点も重要なポイントです。
※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
