3. 在職老齢年金、「今の働き方で大丈夫?」フローチャートで計算方法を確認!
在職老齢年金は、年金額と賃金の合計が一定基準を超えた場合に調整される制度です。停止の有無や金額は、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計によって決まります。
フローチャートに沿って見ていくと、流れは次のようになります。
ステップ①
まず、「基本月額(年金)」+「総報酬月額相当額(給与など)」の合計を確認します。
- 合計が基準額(月51万円・2026年度からは62万円)以下:年金は全額支給
- 合計が基準額を超える:一部または全額が支給停止
ステップ②
もし基準額を超えた場合は、次の計算式で支給額が調整されます。
- 在職老齢年金による調整後の年金支給額
=基本月額−{(基本月額+総報酬月額相当額−基準額)÷2}
※支給停止の対象は老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金(国民年金部分)は減額されません。
ステップ③
さらに、年金額は毎年9月や退職時に行われる「在職定時改定」によって再計算されます。
このとき、在職中に新たに納めた厚生年金保険料が反映され、年金額が少しずつ増えていくしくみです。
在職老齢年金の仕組みを理解しておくことで、「働きながら年金を受け取る」際の手取り額を事前に把握できます。ただし、支給停止の有無は賃金の変動やボーナス額によっても変わるため、実際の試算は年金事務所などで確認しておくと安心です。
4. 在職老齢年金、制度を知り「働く選択肢」を広げよう
2026年度から在職老齢年金の支給停止基準が「月62万円」に引き上げられます。これにより、働きながらでも老齢厚生年金を全額受け取れる人が増える見込みです。
在職老齢年金は複雑に感じますが、しくみを知ることで「損しない働き方」について考えられ、働く選択肢を広げることもできます。また、繰下げ受給など他の制度とも組み合わせて考えることで、自分に合った受け取り方が見えてきます。
年金は「もらうタイミング」も「働くペース」も選べる時代です。まずは、給与明細と年金見込み額を確認するところからはじめましょう。制度改正を前向きに捉えて、安心して長く働ける環境づくりを進めていきたいですね。
「働きながら受け取る年金」は、これからの新しい選択肢です。
参考資料
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」
- 日本年金機構「老齢年金ガイド(令和7年度版)」
- 日本年金機構「老齢年金の繰下げ受給を希望している方へのお知らせ」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
村岸 理美
