4. 給付付き税額控除のデメリット
給付付き税額控除のデメリットは、制度設計や運用が難しいことです。
給付付き税額控除を行うには、国民一人ひとりの所得や税額などを正確に把握して減税額や給付額を算出しなければなりません。現状では、導入に伴い事務が煩雑化したり、大きな費用がかかることが予想されます。
また、給付付き税額控除の財源確保も大きな問題です。
減税や一時金給付も同様ですが、財政赤字が恒常化し対GDP比で200%を超える政府総債務残高を抱える中、国民が十分に恩恵を感じる規模の給付付き税額控除を実施するのは困難が予想されます。
財源確保策として、歳出削減や消費税引き上げ、赤字国債の発行などが考えられますが、国民の理解・納得を得るのは簡単ではありません。
5. 【給付付き税額控除】今後の見通し
高市首相は給付付き税額控除の導入に意欲を示していますが、すぐに導入されることはないと思われます。
少数与党であるため他の政党の賛同を得ることや、財源の確保など、難しい問題が山積しています。さらに、国会で導入が決まったとしても、制度設計や実施に向けたインフラ整備には一定の時間がかかるでしょう。
6. まとめにかえて
給付付き税額控除とは、所得税や住民税を軽減する税額控除に加え、控除しきれなかった分を現金などで給付する仕組みです。
減税効果が限定される低所得者にも支援が届けられるなどのメリットがある一方、制度設計や運用が難しいというデメリットもあります。
すぐに導入されることはないと思われますが、国民の生活や働き方に直結する制度であるため、今後の動向に注視しましょう。
参考資料
- 首相官邸「高市内閣総理大臣記者会見」2025年10月21日
- 労働政策研究・研修機構「労働政策の手法としての給付付き税額控除」
- 内閣府「第1章 世界経済の不確実性の高まりと日本経済の動向(第2節)」
- 内閣官房「「定額減税しきれないと見込まれる方」への給付金(「調整給付金」)のご案内」
西岡 秀泰