電子部品・半導体商社株の一角が11月25日大引け直前に急落
11月25日、15時直前にいくつかの電子部品・半導体商社の株が急落しています。この日、TOPIXは▲0.7%の下落でしたが、黒田電気(7517)は▲7%急落しました。
三信電気(8150)も同じく▲7%下落しました。エクセル(7591)は▲5%下げています。
村上世彰氏に相場操縦の疑いで強制調査の手が
一部電子部品商社株急落のきっかけは、証券取引等監視委員会が村上世彰氏を相場操縦の疑いで強制調査に着手したとの報道です。ここに挙げた銘柄は、村上氏ないしその長女が代表取締役を務めるC&Iホールディングスの投資対象と言われています。
村上世彰氏は元通産官僚で、かつて阪神電気鉄道株の大量保有で注目されましたが、ニッポン放送株のインサイダー取引で有罪となっていました。
現在は執行猶予が明け、主に家族資産を運営する長女の村上絢氏とともに投資活動を活発化させています。今年8月に黒田電気の臨時株主総会で取締役の選任を争ったことも記憶に新しいところです。
株価が下げた理由を考える
さて、大株主が(銘柄は分かりませんが)相場操縦の疑いを掛けられたとして、株価がなぜ下げたのか、理由を考えてみましょう。
ひとつは、今回の結果、村上氏側が保有株を売らざるをえなくなる、あるいは不正で得た財産が没収されることを嫌気したとみることができそうです。相場操縦で有罪になった場合の刑罰は懲役もしくは罰金です。さらに不公正取引で得た財産は没収されます。こうした材料は株価にはマイナス要因となるでしょう。
しかし、筆者は村上氏が投資していると思われる他の銘柄が下げていないことにも注目しています。アコーディア・ゴルフ(2131)は25日の大引けにかけて下げましたが、それでも前日比▲1.4%の下落にとどまりました。ヨロズ(7294)は同+0.8%上昇しています。村上氏のこれら2銘柄への投資持分は黒田電気ほど大きくはないかもしれませんが、筆者の感覚ではもっと株価が下がっていても不思議はないと感じています。
ガバナンス強化と業界再編が後退するという懸念
実は25日に急落した3銘柄は、この数か月の株価のパフォーマンスが好調でした。「だから下げた」とも言えるのですが、ではなぜ最近パフォーマンスが良いのか考える必要があります。
例えば村上氏が買い上げていた可能性もあります。しかし、仮にそうだとしても、企業実態を離れた買い上げであれば、それだけの理由で株価が上げるには限界があるはずです。
おそらく、村上氏がこの3銘柄を買い進める過程で、他の株主や投資家は、村上氏のプレゼンスによって資本効率の改善や業界再編が進むと期待していたのではないでしょうか。
しかし、今回の強制調査で村上氏側は経営リソースをほかに奪われることになる、そのため3社の経営改善への期待がしぼむ、これが市場の反応の理解としてオーソドックスだと思われます。まずは26日以降の株価の推移を見守りましょう。
黒田電気には大事なイベントが控える
この3社の中で、今後特に注意を払いたいのは黒田電気です。
村上絢氏が率いるC&Iホールディングスの要請で8月に、新たに4名の取締役選任について臨時株主総会を開いたことを覚えておられる方も多いでしょう。結果は否決に終わりました。
この時、採決の前に(4名の選任に反対であるという)経営側の考えを労働組合が支持しているという「声明文」が同社HPに掲載されている旨、経営側から株主に伝えられました。
これに対し村上氏側は、一定の材料に基づき、経営側が従業員組合に事前に確認を取らないままHPに掲載したのではないかと疑義をかけました。
この問題は社内調査では終わらず、社外調査委員会が設置され、早晩この結果が出てくる予定です。
村上氏側への調査の進展に目が奪われがちですが、実は同時に、黒田電気の現経営陣のコンプライアンスあるいはガバナンスのあり方にも注意を払う必要があります。
今回の件はまだ結論が出ていませんので予見をもってはいけませんが、最近日本の大企業の中で一昔前なら海外投資家の日本不信になりかねないような出来事が増えているように思います。
ここはぜひ日本の市場メカニズムに自浄作用を働かせ、コンプライアンスとガバナンスを向上させていくべきでしょう。
LIMO編集部