昨年、アップルの共同設立者スティーブ・ウォズニアック氏は、ブロックチェーンを利用したベンチャーキャピタルファンドのイクイグローバル(EQUI Global)を共同設立しましたが、その際、ウォズニアック氏の過去の発言を思い出しました。

「金は採掘技術が進歩すれば供給が増え価値が下がる。米ドルは経済的、政治的な理由から大量に刷られ供給量に制限がないため、本物の通貨ではない。ビットコインの供給には予想可能な有限性があるから金や米ドルより安定している」(2017年10月22日、Money20/20会議)

彼の指摘は正しいのかもしれません。ただし、マクロ経済運営の観点からは「予想可能な有限性」ではデフレを招いてしまいます。過去、1929年に始まった世界大恐慌の時は金本位制だったので、金の量が足枷となって貨幣供給量を増やせなかったことが問題でした。ルーズベルト大統領は大恐慌を脱するために金本位制からの離脱が必要だったのです。

お金は誰かが借金をすると預金通貨が増えるという仕組みなので、お金の量は借りる側の返済能力が限界値となるはずです。

しかし、近年のグローバル経済では、多くの政府が金融緩和によりマネー供給量を増やし、インフレを起こし、国家財政をやり繰りしてきました。それはデフレを防いできたという意味では良いかもしれませんが、必然的に通貨価値は下がってきています。

つまり、デフレを防ぐためには法定通貨の価値は下がり続ける宿命のようですので、仮想通貨と違って見慣れている法定通貨だから安心というわけではありません。

究極的には分散投資と稼ぐ力

極端な例ではありますが、ベネズエラなどハイパーインフレ(2018年12月の物価上昇率が年率約170万%)を経験した国民を思い浮かべれば、急激に価値が目減りしている法定通貨と、皆が心配になれば価値がゼロになるが、ひょっとしたら需要が増えて価値が高まるかもしれない仮想通貨、どちらが安全かはそう簡単な問いではないのです。

現時点で私の個人的意見としては、主要国通貨さえ分散して持っていれば仮想通貨などはなくても良いですが、ベネズエラのような経済危機に直面した国民にとっては、仮想通貨をオルタナティブな通貨として持ちたくなるのは当然でしょう。

究極的には、グローバル経済に翻弄され各国の国民経済はいつどうなるか予測できない時代ですから、ジタバタしても仕方ありません。世界第3位の経済大国日本であっても、この豊かな経済社会がいつ奪われるかわかりません。

個人としては、預金、株式、債券等金融資産は分散しておくこと、また、万が一の経済危機に巻き込まれたときに備え、自分に投資して「稼ぐ力」をつけておくべきなのかもしれません。

大場 由幸