この記事の読みどころ

トヨタ系の中堅部品メーカー、愛三工業(あいさんこうぎょう)の株価が好調です。年初来高値を更新する日が目立っています。

業績面ではそこまで買われる理由は見出せません。部品メーカーの再編対象として注目されていると推測することは可能です。

名前がよく似ている情報通信会社、アイサンテクノロジーの株価急騰の余波を受けている可能性も排除できません。

愛三工業はトヨタ系の中堅部品メーカー

愛三工業(7283)は、電装品やエンジン部品を主力製品とするトヨタ系の中堅部品メーカーです。

時価総額800億円強は、トヨタ系としては小さい部類と言えましょう。なお、トヨタ自動車の持株比率は約29%です。

なぜか株価は好調、サプライズなしの決算でも年初来高値を更新

その愛三工業の株価が好調です。先の上期決算以降、他の多くのトヨタ系部品メーカーが今一つ冴えない中、年初来高値を更新する日が続いており、ひと際目立っています。

しかし、業績面で見る限り、今の株価好調を説明するのは少し難しいように思われます。

上期実績は、最終利益こそ法人税率の低下で大幅増益になりましたが、経常利益は小幅増益(+7%増)でした。

また、経常利益を▲6%減と見込む2016年3月通期の会社予想も据え置きとなり、いわゆる“決算サプライズ”はなかったと言えます。そして、決算発表後の2日間は株価が下落しました。

また、Yahoo!ファイナンスの掲示板を見ても、書き込みは1か月間に1~2回しかなく、個人投資家の間で注目されているとは考え難い状況です。しかし、実際には、(この銘柄としては)相応の出来高を伴って上昇しているのです。

トヨタ系の部品メーカー再編対象としての注目か?

筆者が推測する理由は2つあります。

1つは業界再編絡みで注目されているのではないか、ということです。トヨタ系部品メーカーでは、トヨタ主導による再編が進んでいるように見えます。

実際、2014年12月には系列内のシート事業で大規模な再編を行っており、アイシン精機(7259)が中堅メーカーのシロキ工業(7243)を完全子会社化(2016年4月1日付)することが発表されています。

また、トヨタは過去に何度も系列部品メーカーの再編に大ナタを振るっています。愛三工業は“小粒でピリリと辛い”存在感のある会社ですが、グローバルな競争力向上を目指すトヨタが再編対象としても不思議ではない部品メーカーの1つと考えられます。

もう一つの“アイサン”、アイサンテクノロジーという情報通信会社

2つ目は、筆者の考え過ぎかもしれませんが、難解なアルゴリズムが働いている可能性です。

東証ジャスダックにアイサンテクノロジー(4667)という情報通信会社(測量や3次元地図等)があります。この会社の詳細は省略しますが、10月以降は株価が急騰しています。

その理由は、今秋から株式市場で大きなテーマとなった“自動運転技術”の関連銘柄として物色されたと推測されます。実際、同社は自動運転用の高度3次元ナビゲーションの参考出品を行うなどしています。

名前はよく似ていて本社も同じ愛知県だが、資本的には無関係

愛三工業とアイサンテクノロジー、名前が非常に似ています。しかも、両社とも本社は愛知県にあります。しかし、資本的な関係は全くなく、グループ企業でもありません。

アイサンテクノロジーのHPでは、納入先に「トヨタ自動車グループ各社」とありますが、少なくとも、両社の間に大きな取引関係があるとは到底思えません。そもそも、アイサンテクノロジーはトヨタ系ではありません。

現在の高度難解なアルゴリズムが影響している可能性も

両者の株価の動きを見ると、アイサンテクノロジーが急騰する前は全く違う動きをしていましたが、急騰後は似通った動きになっています。現代の株式トレーディングシステムには、高度に複雑で難解なアルゴリズムが組み入れられているという可能性も考えられます。

愛三工業の好調な株価には、ほぼ全く関係ないアイサンテクノロジーの株価急騰が、何らかの影響を及ぼしているのかもしれません。

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LIMO編集部