リオ五輪を控えたブラジルの今をアナリストが現地レポート
先週より、電機アナリストの和泉と自動車アナリストの持丸は、日本の地球の反対側にあるブラジルに来ています。
搭乗時間だけで20時間強、乗り継ぎを含めると30時間という長旅で、日本との時差が11時間あること、季節が日本と真逆であること(11月22日のサンパウロの気温は27~20度でした)などから、若くない2人にはかなりハードな「出張」でしたが、株式投資に関する様々な“気づき”がありました。
これから、第1回目の本稿を含め、以下のような内容にてお伝えしていきたいと思います。新興国投資だけでなく、日本株投資にも関連するインプリケーションを感じていただければ幸いです。
(1)MRJの競合機種エンブラエルに乗ってみた
(2)ブラジルの家電売場で見た日本製品の存在感の低さ
(3)ブラジルATM事情
(4)建設は間に合うのか? リオ五輪会場に行ってみた
(5)世界第5位の市場に成長したブラジル自動車産業とは?
(6)急降下したブラジル経済の現状とこれから
※順番やタイトルには変更の可能性があります。
世界第4位の航空機メーカー、エンブラエル社
今回のブラジル訪問で最も期待していたことの1つが、世界第4位の航空機メーカーであるブラジル企業、エンブラエル社製の飛行機に乗ることでした。
というのは、エンブラエルは三菱重工業(7011)、三菱商事(8058)、トヨタ自動車(7203)などが出資する三菱航空機と三菱重工業が開発中のMRJにとって最大のライバルであるためです。MRJは11月11日に初飛行に成功し、大きな話題を集めたことは記憶に新しいと思います。
幸運なことに、サンパウロからリオデジャネイロへのフライトは、エンブラエル社製の旅客機「E195」でした。
約1時間の空の旅でしたが、乗り心地については、米国のボーイングや欧州のエアバスと比べても全く遜色がない、というのが今回搭乗した海外出張豊富な2人の共通した印象でした。
ラインアップが豊富なEジェット・シリーズ
エンブラエル社は、航続距離が3,000km程度、乗客数が70~120名程度の小型ジェット旅客機をEジェット・シリーズと名付け、席数が少ない順番からE170、E175、E190、E195の4シリーズを取り揃えています。
初号機の生産開始は1999年からですので、生産の習熟度、顧客認知度など多くの点でMRJに対してはかなりの優位性がある推定されます。
ちなみに、Eジェット・シリーズの生産・開発には、川崎重工業(7012)が参画しています。
エンブラエル社の売上高は現地通貨ベースで3年間で1.5倍に拡大
簡単にエンブラエル社の概要をご紹介します。同社は、ブラジルだけではなく米国ニューヨーク証券取引所(NYSE)にも上場しており、2014年12月期の売上高は日本円で約6,700億円、時価総額は約7,000億円です。
レアル安により円やドルベースでは業績は停滞して見えますが、現地通貨ベースでは、売上高は2011年12月期の99億レアルから、2014年12月期には150億レアルへと3年間で約1.5倍に拡大しています。
余談ですが、NYSEでのティッカーシンボル(銘柄コード)はERJです。Eはエンブラエル、RJはリージョナルジェットを表しているのだと思いますが、MRJと一字違いなので覚えやすいですね。
Eジェットに対するMRJの差別化ポイントを精査していきたい
今回の体験を通して、ブラジル企業といえども先輩格であるエンブラエルは侮れない存在であることが実感されました。
当然、後発であるMRJは、乗り心地、燃費性能など様々な差別化ポイントを訴求していと思いますので、初飛行の成功に喜んでいるだけではなく、今後は、そうした点を深く精査していくことが大切だと感じました。
和泉 美治