7. 老後の年金は確定申告が必要?「確定申告不要制度」とは

公的年金は「雑所得」に分類されますが、一定の条件を満たす場合には「確定申告不要制度」が適用され、確定申告をおこなう必要がなくなります。

7.1 確定申告が不要となる条件とは?

以下の両方に該当する場合、計算の結果、納税額がある場合でも所得税等の確定申告は不要です。

  • 公的年金等(※1)の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(※2)が20万円以下である

※1 国民年金や厚生年金、共済組合から支給を受ける老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金、老齢共済年金)、恩給(普通恩給)や過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金、確定給付企業年金契約に基づいて支給を受ける年金など
※2 生命保険や共済などの契約に基づいて支給される個人年金、給与所得、生命保険の満期返戻金など 

ただし、所得税の還付を受けたい場合(※3)は確定申告が必要となります。

また、所得税の確定申告が不要な場合でも、生命保険料控除や地震保険料控除など、源泉徴収票に記載されていない控除を適用したい場合、公的年金などに係る雑所得以外の所得がある場合は住民税の申告が必要となる場合があります(※4)

不明な点はお住まいの市区町村に問い合わせましょう。

※3  公的年金から源泉徴収された所得税を、医療費控除や雑損控除などにより取り戻したい場合
※4 一度確定申告をすれば、その情報が市区町村に送られるため、改めて住民税の申告をする必要はありません

7.2 確定申告はスマホでOK!令和7年分からさらに便利に

令和7年(2025年)分の確定申告は、スマートフォンとマイナンバーカードの連携が進み、さらに簡単になります。

スマートフォンのマイナンバーカードを利用すれば、マイナンバーカードをスマホで読み取らなくても、申告書の作成・e-Tax送信が可能です。

申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で案内に沿って入力すると完成。自動計算機能によって計算ミスも防げます。

また、マイナポータル連携の機能を使うと、保険料控除証明書や源泉徴収票などの情報を自動取得し、確定申告書へ反映できます。書類を集めて入力する手間が省け、確定申告にかかる時間が大幅に短縮できるでしょう。

【要注意】マイナンバーカードと電子証明書の「有効期限切れ」には気をつけよう!

便利なサービスを継続して利用するために、マイナンバーカードと電子証明書の有効期限には注意が必要です。期限切れになるとe-Taxでの手続きができなくなります。

確定申告の時期は、市区町村の更新窓口が特に混み合うことが予想されます。時間に余裕をもって早めに更新手続きをおこないましょう。

8. 老後の備えを計画的に進めていこう

本記事では、2025年度の年金額や支給日、働き方別の年金額の目安、そして60歳代~80歳代の平均受給額を一覧で紹介しました。

2025年度の年金額は1.9%引き上げられますが、物価上昇の影響もあり、実質的には「増えた実感が薄い」という声も少なくありません。

年金額は、加入期間や現役時代の収入によって金額が大きく変わり、男女間でも受給額に差があり、男性のほうが全体的に受給額が多いという傾向があります。

老後、公的年金だけで全ての生活費をカバーできず、貯蓄の取り崩しや就労によって収入を補っている世帯は少なくないと考えられます。

物価上昇や医療費の増加など、今後の生活コストの上昇を考えると「年金だけに頼る」ことはますます難しくなるでしょう。

だからこそ、現役世代のうちから公的年金に加え、NISAやiDeCoなどを活用した自助努力が欠かせません。

自分の将来受け取る年金額を早めに把握し、老後の備えを計画的に進めていくことで、将来の安心につながります。

参考資料

中島 卓哉