さて、前置きが長くなりましたが、今回、魚沼コシヒカリは2年ぶりに「特A」に返り咲きました。テレビのニュースでも、「特A」への返り咲きが決まり感涙にむせぶ農協関係者のインタビューが放映されていました。初のランクダウンという“屈辱”を耐え忍び、復活を遂げたことの重大性を感じるに十分な場面でした。

「特A」復帰の要因は、その美味しさもありますが、それ以上に昨年の陥落で危機感を強めた農協関係者の“努力”によるものが大きいのではないでしょうか。28年連続で「特A」を獲得してきたことで知らず知らず努力を怠ってきたのかもしれません。

近年、各ブランド米が「特A」獲得を目指す背景は?

今回の審査結果では、「特A」を獲得した地方ブランド米の数は、過去最高の55(昨年比+12増)となりました。実は現在、国内ではブランド米競争が熾烈を極めています。

この背景には、政府が長年にわたり続けてきた減反政策(農家に補助金を出してコメの作付けを制限する)の廃止があります。これにより、各農家は所得を引き上げるための自助努力を促され、ブランド米が“乱立”するようになりました。現在では750以上のブランド米があると見られます。そして、その乱立が現在の「特A」獲得をめぐる競争激化になっています。

確かに「特A」獲得は、少なからず宣伝効果になるでしょう。逆に言うと、昨年の魚沼コシヒカリのように、「特A」から陥落するダメージも大きいと考えられます。

昨年脚光を浴びたブランド米は?

実際、一度「特A」を取得しても決して安泰とは言えません。たとえば、昨年に「A´」から2段階アップして「特A」を獲得して話題となった「森のくまさん」(熊本県)や、初登場でいきなり「特A」となった「彩のきずな」(埼玉県)はいずれも「A」にランクダウンとなりました。その他にも、「飛騨コシヒカリ」(岐阜県)や「みずかがみ」(滋賀県)など、近年躍進が目立ったブランド米も「特A」から陥落しています。

これらのブランド米を含め、来年も「特A」獲得を目指す競争がいっそう激化していくでしょう。しかし、一番重要なのは、消費者がその美味しさに満足することです。生産者側の単なる賞レースに終わらせないよう、私たち消費者も厳しい評価を下すことが重要でしょう。

葛西 裕一