6. 生活支援が必要なのはシニアだけではない現状
住民税非課税世帯となり、支援を必要としているのはシニア世代だけではありません。
厚生労働省が公表した「生活保護の被保護者調査(令和5年度確定値)」によれば、生活保護を受給しているのは月平均で約164万世帯。
その内訳を見ると、高齢者世帯だけでなく、母子世帯(3.9%)や障害者・傷病者世帯(25.0%)なども一定の割合を占めています。
さまざまな事情がある世帯の暮らしを支えるため、「住民税非課税世帯」を対象とした支援は「現金給付」のような一時的なものに限りません。
国民健康保険料や介護保険料の減額、国民年金保険料の免除・納付猶予といった負担軽減策や、幼児教育・保育の無償化、高等教育の修学支援新制度といった子育て世帯向けの支援も存在します。
国が定める制度の他にも、自治体が独自に行っている支援策もありますので、活用できる制度を見逃さないよう、お住まいの地域の情報を確認してみましょう。
7. 2025年の在職老齢年金見直しのポイント
2025年6月13日、国会で年金制度改革関連法が成立しました。多様化する働き方やライフスタイルにフィットする年金制度を目指すものです。
この改正にはパートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大(いわゆる「106万円の壁」の撤廃が関連)、遺族年金の見直し(遺族厚生年金の男女差解消、子どもの遺族基礎年金受給の要件緩和)など、注目すべきポイントがいくつかあります。
今回は、その中でも働くシニアへの影響が大きい「在職老齢年金制度の見直し」について見ていきましょう。
7.1 「在職老齢年金制度」の見直し
在職老齢年金とは、60歳以降で老齢厚生年金を受給しながら働いている場合、年金額(※)と報酬(給与・賞与)の合計が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる制度のことです。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。
支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)
支給停止調整額は年度ごとに少しずつ見直しがおこなわれてきました。
- 2022年度:47万円
- 2023年度:48万円
- 2024年度:50万円
- 2025年度:51万円
- 2026年度:62万円
今回の改正(2026年4月から適用)では、51万円(2025年度金額)から62万円へと大幅に引き上げられることが決まりました。
厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。
この引き上げにより、年金の減額を気にして「働き控え」をするシニア世代が、より自由に働き方を選べるようになると考えられるでしょう。
8. まとめ
今回は住民税非課税世帯を対象にした給付金や支援について詳しく解説しました。
住民税非課税世帯になる方は生活保護や障害者、ひとり親などがあげられますが、寡婦(夫)だったり、前年の所得が各市町村の基準を下回る(市区町村で基準が違う)方も含まれています。
急な事故や病気で配偶者を亡くされた方や、病気などの事情でやむを得ず仕事を辞めたという方は住民税非課税世帯に該当するかもしれませんので、自分が対象者として該当するかしっかり確認しておきましょう。
また、現役時代は生活にそこまで困ったことがないという高齢者でも、年金収入が思った以上に少なくて実は住民税非課税世帯に該当するという方は少なくありません。
厚生労働省が「課税されている世帯」を年代別に調べた資料によれば、70歳以上で課税されている世帯に該当するのは5~6割程度です。
高齢者の4割から半数程度の方は住民税非課税世帯を対象にした給付金や支援を受けられるということです。
自分が受けられる給付金や支援制度を活用するのを見逃さないよう、情報は常にチェックしておきましょう。
参考資料
- 総務省「個人住民税」
- 札幌市「個人市民税」
- 国税庁 高齢者と税(年金と税)「年金収入の所得計算、所得控除の増額」
- 厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」
- 厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和5年度確定値)の結果を公表します」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
鶴田 綾

