11月に入り、年末調整や確定申告の準備を意識する方も増えてきました。

特に65歳以上のシニア世帯では、「年金収入で住民税が非課税になる基準はいくらなのか」「自分の世帯はどこに該当するのか」といった疑問がある人もいるのではないでしょうか。

物価高が続くなか、各種給付金や支援制度の対象となるかどうかは、家計を守るために欠かせない情報です。

住民税には所得に応じた“非課税ライン”があり、年金受給者の場合は収入状況や扶養の有無で基準が細かく変わります。

本記事では、住民税非課税の仕組み、札幌市を例にした具体的な所得基準、をわかりやすく整理。制度理解の参考にして、年末に向けて早めに確認を進めてみてください。

1. 住民税非課税世帯が受けられる支援とは

各種公的支援の対象となるかどうかの基準として、しばしば「住民税非課税世帯」という区分が用いられます。

近年たびたび実施されている物価高対策の現金給付もその一つです。

これらの支援は主に「住民税非課税世帯」を対象としており、「1世帯あたり数万円」を基本に、子育て世帯には子供の人数に応じた加算が行われることも少なくありません。

ニュースや選挙公約でも頻繁に取り上げられるように、「住民税非課税世帯」であることは、こうした経済的な支援を受けられるかどうかの一つの目安となります。

【ご注意】2024年度補正予算(※2024年12月可決・成立)に盛り込まれた「住民税非課税世帯」を対象とする「3万円給付金」は、2025年1月以降、各自治体で順次給付作業がスタートし、7月現在、多くの市区町村ですでに申請期限を迎えています。

なお、給付金の申請方法や給付までのスケジュール、細かい支給要件などは市区町村により異なります。お住まいの自治体の最新情報を、ホームページや広報誌などでご確認ください。LIMOでは個別のお問い合わせへのお答えはいたしかねます。

2. まず押さえたい住民税の基本と仕組み

まずは、住民税のしくみの基本をおさらいしておきましょう。

個人住民税のしくみ

住民税は、住んでいる地域の行政サービスを支える目的で、都道府県や市区町村に納める地方税です。

住民税額は、所得に応じて決まる「所得割」と、所得に関係なく一律で課される「均等割」の合計で決まります。

所得が一定基準に満たないなどの理由で、この「所得割」と「均等割」の両方が課税されないケースを「住民税非課税」といいます。

さらに、世帯全員が住民税非課税となる世帯は「住民税非課税世帯」と区分され、国民年金保険料や国民健康保険料などの減免をはじめとする各種優遇措置や公的支援の対象となります(※)

※なお「住民税の所得割のみ非課税」となる区分もあります。ただし各種給付金などの対象となるかどうかは自治体により異なるため、必ずお住まいの市区町村などの基準をご確認ください。

2.1 住民税が非課税になる《3つの要件》

住民税が非課税となるのは、以下の3つのいずれかに該当するケースです。

  1. 生活保護を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
  3. 前年の所得が各市町村の基準を下回る(市区町村で基準が違う)

1・2については全自治体で同じです。3の所得要件のみ、各市区町村でそれぞれの基準を設けています。

3. 住民税非課税世帯の所得基準は?

「住民税非課税世帯」に該当する所得や収入のボーダーラインについて、札幌市の例を挙げて見てみましょう。

3.1 札幌市の例「住民税非課税世帯」となる《所得》ボーダーラインはいくら?

  • 扶養親族を有さない方:45万円
  • 扶養親族を有する方:35万円×家族数(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+31万円

収入から経費や各種控除を差し引いた金額が「所得」です。人によっては「所得よりも、収入換算のほうが分かりやすい」と感じるかもしれませんね。

4. 札幌市の例「住民税非課税世帯」となるボーダーラインはいくら?

住民税非課税となる限度額は、収入のいわゆる「額面」だけではなく、収入の種類や扶養親族数などの条件により変動します。

ここでは札幌市で「住民税が非課税となる所得基準」と、それに対応する収入金額について扶養親族が「なし」「1名」「2名」の場合を比べてみましょう。

扶養親族なし

  • 非課税となる合計所得金額(※):45万円
  • 給与収入のみの場合の収入金額:100万円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳未満):105万円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳以上):155万円

扶養親族1名

  • 非課税となる合計所得金額(※):101万円
  • 給与収入のみの場合の収入金額:156万円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳未満の方):171万3334円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳以上の方):211万円

扶養親族2名

  • 非課税となる合計所得金額(※):136万円
  • 給与収入のみの場合の収入金額:205万9999円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳未満の方):218万1円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳以上の方):246万円

※合計所得金額…損失の繰越控除前の総所得金額等

住民税非課税となる年収のボーダーラインは、扶養親族がいない場合、収入が給与収入のみであれば100万円ですが、65歳以上で公的年金収入のみの場合は155万円にまで上がります。

扶養親族が1名であれば、給与収入のみの場合は156万円、65歳以上で公的年金収入のみの場合は211万円です。

非課税限度額は扶養家族の数が多いほど引き上げられ、65歳以上の収入が年金のみの場合ではさらに高くなることが分かります。

5. シニアが住民税非課税世帯になりやすい理由

「65歳以上の年金収入のみ」の世帯では、非課税限度額は高めに設定されています。

65歳以上では公的年金の最低控除枠が多くなっていること、遺族年金が非課税であること、現役時代よりも収入が下がるケースが一般的であることなどを見ても、年金暮らしの高齢者世帯は「住民税非課税世帯」に該当しやすくなると言えます。

ここでは、住民税が「課税されている世帯」の年齢別割合を、厚生労働省の「令和6年国民生活基礎調査」をもとに見ていきましょう。

  • 30〜39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

住民税が課税される世帯の割合は、30~50歳代では約90%。一方シニア世代になると60歳代で79.8%、65歳以上は61.1%、75歳以上は54.4%というように、年齢層が高いほど下がります。

ただし、住民税非課税世帯の判定基準に用いられるのは「所得」のみです。

「年金額は多くないが、預貯金などの金融資産がある」というシニア世帯が一定数含まれている点には留意が必要となるでしょう。

6. 生活支援が必要なのはシニアだけではない現状

住民税非課税世帯となり、支援を必要としているのはシニア世代だけではありません。

厚生労働省が公表した「生活保護の被保護者調査(令和5年度確定値)」によれば、生活保護を受給しているのは月平均で約164万世帯。

その内訳を見ると、高齢者世帯だけでなく、母子世帯(3.9%)や障害者・傷病者世帯(25.0%)なども一定の割合を占めています。

さまざまな事情がある世帯の暮らしを支えるため、「住民税非課税世帯」を対象とした支援は「現金給付」のような一時的なものに限りません。

国民健康保険料や介護保険料の減額、国民年金保険料の免除・納付猶予といった負担軽減策や、幼児教育・保育の無償化、高等教育の修学支援新制度といった子育て世帯向けの支援も存在します。

国が定める制度の他にも、自治体が独自に行っている支援策もありますので、活用できる制度を見逃さないよう、お住まいの地域の情報を確認してみましょう。

7. 2025年の在職老齢年金見直しのポイント

2025年6月13日、国会で年金制度改革関連法が成立しました。多様化する働き方やライフスタイルにフィットする年金制度を目指すものです。

この改正にはパートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大(いわゆる「106万円の壁」の撤廃が関連)、遺族年金の見直し(遺族厚生年金の男女差解消、子どもの遺族基礎年金受給の要件緩和)など、注目すべきポイントがいくつかあります。

今回は、その中でも働くシニアへの影響が大きい「在職老齢年金制度の見直し」について見ていきましょう。

7.1 「在職老齢年金制度」の見直し

在職老齢年金とは、60歳以降で老齢厚生年金を受給しながら働いている場合、年金額(※)と報酬(給与・賞与)の合計が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる制度のことです。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。

支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)

支給停止調整額は年度ごとに少しずつ見直しがおこなわれてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:62万円

今回の改正(2026年4月から適用)では、51万円(2025年度金額)から62万円へと大幅に引き上げられることが決まりました。

厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。

この引き上げにより、年金の減額を気にして「働き控え」をするシニア世代が、より自由に働き方を選べるようになると考えられるでしょう。

8. まとめ

今回は住民税非課税世帯を対象にした給付金や支援について詳しく解説しました。

住民税非課税世帯になる方は生活保護や障害者、ひとり親などがあげられますが、寡婦(夫)だったり、前年の所得が各市町村の基準を下回る(市区町村で基準が違う)方も含まれています。

急な事故や病気で配偶者を亡くされた方や、病気などの事情でやむを得ず仕事を辞めたという方は住民税非課税世帯に該当するかもしれませんので、自分が対象者として該当するかしっかり確認しておきましょう。

また、現役時代は生活にそこまで困ったことがないという高齢者でも、年金収入が思った以上に少なくて実は住民税非課税世帯に該当するという方は少なくありません。

厚生労働省が「課税されている世帯」を年代別に調べた資料によれば、70歳以上で課税されている世帯に該当するのは5~6割程度です。

高齢者の4割から半数程度の方は住民税非課税世帯を対象にした給付金や支援を受けられるということです。

自分が受けられる給付金や支援制度を活用するのを見逃さないよう、情報は常にチェックしておきましょう。

参考資料