余談ですが、高校生の時に受けた説明は、「10%成長が100年続いたら、国内を走り回るトラックの台数が日本の人口より多くなってしまうから」というものでした。当時の筆者は大いに納得したのですが、後から考えれば、それは誤りでした。
製品の小型化が進んだこと、経済のサービス化が進んだこと、高付加価値化が進んだこと、などにより、物流面での巨大化は続かなかったのです。たとえば筆者のスマホは当時の超大型コンピューターより遥かに高い性能を持っているわけですから、そのことを考えれば、一事が万事でしょう。
まあ、当時の大人たちは「大きいことは良いことだ」という高度成長期の文化に染まっていたのですから、仕方なかったのでしょうが。
農村から都市への労働力供給には限度あり
高度成長期には、都市に新しい工場が数多く建ちます。そこで働く労働者は、農村から来るわけですが、当然ながら農村から来る人数には限りがあります。極端な話、「農村で働く若者が全員都市部に出て来てしまい、農村は高齢者だけで維持する」としても、いつかは若者の移動が止まります。
都市部で若者が結婚して子を産むとしても、彼らが労働力になるのは最低15年先ですから、都市部の労働力不足から高度成長が鈍ることは避けられません。余談ですが、経済学ではこうした理由で成長鈍化が始まる時点のことを「ルイスの転換点」と呼ぶようです。