中国の成長率低下は日本の戦後を後追いするのか

中国の成長率が低下して来たのは、日本の高度成長期の終了と同じ理由だ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。

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中国の成長率は、かつては2桁も珍しくありませんでしたが、最近は6%台が多いようです。しかし、そのこと自体は中国の不振を示すものではなく、日本でもどこの国でも当然のように起きることなのです。今回は、中国の経済成長率について考えてみましょう。

高度成長は永続しない

日本の高度成長期が石油ショックによって終わった時、高校生だった筆者は「仕方ない。高度成長が永遠に続くはずはないのだから」と言われました。それは、今思えば真実でした。高度成長が永続しないメカニズムが働くので、当時の日本でも今の中国でも他の途上国でも、高度成長は永続しないのです。

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そこで最近の筆者は、中国経済等の担当者に対して「日本の高度成長期から安定成長期について学んでおくと良い」とアドバイスをしているわけです。

理由の第一は農村からの労働力供給が止まること、第二は機械等の普及により労働生産性の上昇が止まること、第三は産業構造の変遷によって労働生産性の上昇が止まること、です。

日本と中国の類似点については、それらに加えて「少子高齢化により労働力の供給が細ると同時に労働生産性の上昇が止まること」も挙げられるでしょう。今ひとつあるかもしれませんが、それについては後述します。

余談ですが、高校生の時に受けた説明は、「10%成長が100年続いたら、国内を走り回るトラックの台数が日本の人口より多くなってしまうから」というものでした。当時の筆者は大いに納得したのですが、後から考えれば、それは誤りでした。

製品の小型化が進んだこと、経済のサービス化が進んだこと、高付加価値化が進んだこと、などにより、物流面での巨大化は続かなかったのです。たとえば筆者のスマホは当時の超大型コンピューターより遥かに高い性能を持っているわけですから、そのことを考えれば、一事が万事でしょう。

まあ、当時の大人たちは「大きいことは良いことだ」という高度成長期の文化に染まっていたのですから、仕方なかったのでしょうが。

農村から都市への労働力供給には限度あり

高度成長期には、都市に新しい工場が数多く建ちます。そこで働く労働者は、農村から来るわけですが、当然ながら農村から来る人数には限りがあります。極端な話、「農村で働く若者が全員都市部に出て来てしまい、農村は高齢者だけで維持する」としても、いつかは若者の移動が止まります。

都市部で若者が結婚して子を産むとしても、彼らが労働力になるのは最低15年先ですから、都市部の労働力不足から高度成長が鈍ることは避けられません。余談ですが、経済学ではこうした理由で成長鈍化が始まる時点のことを「ルイスの転換点」と呼ぶようです。

機械の普及率上昇で労働生産性の上昇が緩やかに

参考記事

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塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
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