機械の普及率上昇で労働生産性の上昇が緩やかに
手作業で田畑を耕していた農村にトラクターが導入されると、同じ田畑を少ない人数で耕せることになります。労働生産性の劇的な向上です。しかし、すべての農家がトラクターを持ってしまうと、労働生産性の向上は止まります。古いトラクターを最新式のものに取り替えたとしても、労働生産性の向上はわずかでしょうから。
同様のことは、洋服工場でも起こります。手作業で洋服を縫っていた工場にミシンが導入されれば労働生産性は劇的に向上しますが、旧式のミシンを最新式のものに置き換えても、労働生産性の向上は限定的ですから。
産業構造の変遷によって労働生産性の上昇が緩やかに
ペティ・クラークの法則と言われるものがあります。経済が成長すると労働力が第一次産業(農業等)から第二次産業(工業等)へ、第二次産業から第三次産業(サービス業等)へ、移動していくというのです。
人々が貧しい時は、まず食べることですから、人々は食糧生産に従事せざるを得ません。満腹になると、テレビや化粧品が欲しくなりますから、工業製品の需要が増え、工業で働く人が増えます。人々は、テレビや化粧品が買えるようになると、次はコンサートや美容院へ行きたくなるので、コンサート産業や美容院といったサービス業で働く人が増える、というイメージですね。
問題は、工業に比べてサービス業は労働生産性が低いということです。全自動の工場で化粧品を作るのと比べて美容院は、1万円を稼ぐために必要な労働者数が遥かに多いからです。したがって、需要が第二次産業から第三次産業に移動することによって、国全体としての労働生産性は下がっていくわけです。
少子高齢化により労働力の供給が減り、労働生産性の上昇が止まる
日本は少子高齢化ですから、現役世代の人口が減っていきます。そのこと自体が、経済成長率を押し下げる要因となります。加えて、高齢化は需要を自動車等から医療・介護へとシフトするので、労働生産性を低下させる要因となります。
若者が100万円の自動車を買っても全自動のロボットが自動車を作るだけですが、高齢者が100万円の介護を頼むと大勢の介護士が必要となるため、日本経済全体としての労働生産性は下がるのです。