4. 「介護費用」の備えが必要な理由とは?
介護保険はあくまで費用の一部を補う制度であり、必要な支出をすべて保障する仕組みではありません。
自己負担割合や支給限度基準額といった制約があるため、実際には毎月数万円から数十万円の費用が発生し、公的な介護保険だけで賄うのは難しいのが現状です。
実際に公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、介護にかかる月々の費用は平均9万円、一時的な支出として住宅改修や介護用ベッドの購入などに平均47万2000円が必要とされています。
さらに、居住費や食費など給付の対象外となる費用も多く、特に施設介護では、この部分が大きな比重を占め、家計を圧迫する要因となっています。
加えて、介護給付費は高齢化の進展に伴い増え続けており、制度はたびたび見直しが行われてきました。
以上のことから、今後の財政状況によっては自己負担がさらに増える可能性が高く、介護費用への備えが一層重要であることが分かります。
5. 今からできる介護費用の備えをしておこう
本記事では、公的介護保険の基本を整理しつつ、介護費用への備えがなぜ必要なのか解説していきました。
介護保険制度は大きな支えになりますが、実際には「介護にかかる費用をすべて補える制度」ではありません。
自己負担や保険の対象外となる出費、さらに今後の制度改正による負担増を踏まえると、事前の準備が欠かせないのが現状です。
介護費用を含めた老後の家計をシミュレーションしてみることや、在宅介護か施設介護かといった方針を家族と早めに話し合っておくことなど、今から取り組めることは少なくありません。
「介護保険があるから大丈夫」と思わず、制度の仕組みを正しく理解し、備える姿勢こそが将来の安心につながるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」
- 東京都北区「介護サービス利用者負担について」
- 厚生労働省「区分支給限度基準額について」
- 杉並区「介護保険で利用できる額には上限があります」
- 厚生労働省「制度改正の主なポイント」
- 公益財団法人生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
和田 直子