この記事の読みどころ
自動車株の中で富士重工が好調です。上期決算後には、自動車株で唯一、年初来高値を更新しました。これは上場来高値でもあります。
好調な米国販売、円安メリット、過去最高益更新、増配などが要因とされていますが、これらは決して富士重工だけに限ったことではありません。
富士重工の高いROE(株主資本利益率)が外国人投資家に高く評価されている可能性があります。
上期決算後に上場来高値を更新した富士重工
富士重工の株価が堅調です。自動車メーカーの中では、この上期決算発表後に唯一、年初来高値を更新しました。
また、この年初来高値は上場来高値でもあります。振り返ってみると、アベノミクス始動以降、基本的には今なお上昇基調が続いています。
米国市場の販売好調や円安などで4期連続の最高益更新へ
富士重工の上期決算は大幅増益でした。また、下期も米国市場での販売好調や円安効果が見込めるため、2016年3月通期予想を上方修正しました。これで4期連続の最高益更新となる見込みです。
さらに、増配も発表。配当性向は昨年実績の20%から30%へ引き上げる予定です。今回の決算では、この増配の発表がポジティブに評価されたようです。こうした様々な状況が、好調な株価の理由とされている模様です。
業績好調な自動車メーカーは他にもあるのに、なぜ富士重工株だけ好調なのか
しかし、ちょっと待ってください。
米国販売の好調や円安メリットは、富士重工だけでなく、他にも同じような状況の会社が数多くあります。また、最高益更新も富士重工だけではありません。
引き上げた配当性向30%も、今の時代ではごく普通であり、必ずしも高いとは言えないでしょう。また、株価指標(バリュエーション)でも突出した割安感があるわけではありません。
トヨタもスズキも上場来高値を付けてから大きく下落したまま
2015年に入って上場来高値を更新した銘柄は、富士重工の他にトヨタ自動車、スズキの2つがあります。
しかし、トヨタの現在の株価はその上場来高値から約▲15%下落していますし、スズキも約▲20%下落しています。上期決算後に上場来高値を更新した富士重工とは明らかに違う動きです。
ちなみに、トヨタもスズキも2016年3月期は過去最高益を更新する見込みです。
外国人投資家は営業利益率よりROEを重視
理由はいくつか考えられますが、その中でも注目したいのが、高いROE(株主資本利益率)です。
ROEは、企業の収益性を示す指標の1つで、株主資本がどれだけの利益につながるかを計ります。私たちは、企業の収益性を考える時、売上高営業利益率を論じることが少なくありません。
もちろん、この営業利益率も重要な指標です。しかし、日本株の最大の買い手でもある外国人投資家が重視するのは、営業利益率よりもROEなのです。
ROEの高い富士重工株は、外国人投資家が好む代表的なパターン
図表2に自動車メーカー各社のROEと営業利益率のマトリクスを示しました。富士重工の場合、営業利益率も高いですが、ROEが圧倒的に高いことがわかります。
こういう銘柄は、外国人投資家が“順張り”で買い増しする代表的なものと言えましょう。多くの外国人投資家は、富士重工株を長期保有して、なおかつ、コツコツと買い増ししているのではないでしょうか。
確かに、一部の外国人投資家は、局面によっては利益確定(売却)を行っているでしょうが、下落局面では再エントリーしている可能性が高いと考えられます。
出所:各社資料をもとに投信1編集部作成
外国人投資家が好む銘柄は、個人投資家もじっくり臨もう
上方修正された会社予想、及び、今回の増配予想に基づくと、富士重工のROEはもう一段改善すると考えられます。もし、円安が進めば、さらに改善するでしょう。
この富士重工のような外国人投資家が好む銘柄は、ちょっとネガティブなニュースが出ても慌てずに、腰を据えてじっくりと臨みましょう。
LIMO編集部