今年の春ごろから「不支給の増加」という報道があった障害年金。厚生労働省が公表した調査報告書でも、新規裁定における不支給割合の上昇が指摘されました。障害年金は病気やケガで生活や仕事に支障が出た場合に私たちを経済的に支える、大切な公的年金制度です。

今回は、日本年金機構の令和5年度統計をもとに、新規裁定の約7割を精神・知的障害が占めるという支給傾向を解説します。さらに、「2階建て」の仕組みや等級ごとの具体的な支給額と加算制度についても詳しくご紹介。正しい知識を身につけ、万が一の時に慌てないよう準備を進めましょう。

1. 障害年金の支給「全体の約7割を占めるのはどんな障がい?」

障害年金は病気やけがにより生活や仕事に支障が出た場合に支給される公的年金で、現役世代の所得保障の役割も果たします。対象となるのは、事故による後遺症だけでなく、視覚や聴覚、肢体不自由といった身体的な障害、さらにはがんや糖尿病などの内部疾患、精神疾患など多岐にわたります。

障害年金を受給するには資格認定が必要で、初めての申請を「新規裁定」、継続受給の申請を「再認定」と呼びます。「障害年金は、どのような障害に対して多く支給されているのか?」

年金機構が令和6年9月に発表した「障害年金業務統計(令和5年度決定分)」の診断書の種類別支給件数についてみていきましょう。

令和5年度 診断書種類別件数①診断書種類別支給件数

令和5年度 診断書種類別件数①診断書種類別支給件数

出所:日本年金機構「障害年金業務統計(令和5年度決定分)」

障害年金の【新規裁定】と【再認定】に分けて解説します。

年金機構が発表した令和5年度のデータによると、新規裁定では、全体の約7割が「精神障害・知的障害」で占められ、特に障害基礎年金では8割以上を占めています。肢体障害などの外部障害も15%以上を占め、身体的障害も一定の割合で支給されています。

再認定もまた、「精神障害・知的障害」が全体の約75%と最も多く、継続的な支援の必要性が示唆されます。肢体障害も次いで多く、安定的な継続支給が目立ちます。また、糖尿病などの内部障害も約11%を占め、長期的な支給の実態がうかがえます。

令和5年度の障害年金(障害基礎・厚生合計)では、新規裁定13万3614件、再認定23万5011件で合わせて約28万件を超える支給件数がありました。そのうち約7割の「精神障害・知的障害」が最多ということがわかりました。また、肢体障害や内部障害も一定の割合を占めていることがわかりました。

では、実際に「障害年金はどのような仕組みで、それぞれの障害等級でいくらもらえるのか?」障害年金の仕組みと年金額についてみてみましょう。