少しずつ秋らしい陽気になってきましたが、来月の10月15日は今年5回目の年金支給日があります。年金を受け取りはじめた方、あるいはこれから受け取る予定の方にとって、そろそろ確定申告は気になりはじめる手続きの一つではないでしょうか?公的年金も所得と見なされ、課税の対象になります。しかし、一定の条件を満たせば確定申告が不要になる制度があります。
今回は、この「確定申告不要制度」の仕組みを詳しく解説するとともに、国民年金と厚生年金の実際の受給額データから、年金だけでは見えてこない老後の生活の現実をひも解いていきます。
1. あなたの年金、確定申告が不要になる2つの要件とは?
確定申告とは、1年間の収入と税金をまとめて整理して、税金の納めすぎや不足を清算する手続きのことです。
公的年金等も「雑所得」として課税対象なので確定申告をする必要がありますが、一定の要件を満たす場合は確定申告が不要になります。一定の要件について、みていきましょう。
※障害年金や遺族年金は非課税なので税金はかかりません。
下記1.と2.の両方に該当する場合は、確定申告は不要になります。
- 公的年金等の収入金額合計額が400万円以下、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
②の「公的年金等に係る雑所得以外の所得」とは、生命保険会社などで契約した個人年金や給与所得、生命保険の満期返戻金などが含まれます。
「確定申告不要制度」でも申告が必要な場合とは?
所得税の還付を受ける場合(住宅ローンを利用して新築、増改築等して税額控除する場合や医療費控除を受ける場合など)や、住民税の申告が必要な場合は確定申告が必要になります。
2. みんなの国民年金、"ふつうの人"がもらえる平均はいくら?
まずは、厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金の年金月額階級別老齢年金受給権者数(男女別)についてみていきましょう。
国民年金の年金月額階級別老齢年金受給権者数(男女別)についてポイントを2点解説します。
2.1 男女ともに最多層は「6~7万円」だが、男女平均は「5万7584円」
国民年金の受給権者で最多層は「6万円以上~7万円未満」で、
- 〈全体〉6万円以上~7万円未満:1597万6775人
- 〈男性〉6万円以上~7万円未満: 896万8414人
- 〈女性〉6万円以上~7万円未満: 700万8361人
しかし、平均年金月額は男女計で「5万7584円」です。
これは「平均(=全体を均した数値)」と「最頻値(=最も多い層の値)」の違いによるものです。
年金額が低い人も多く存在していることで全体の平均を押し下げており、その結果、最多層より平均値が下回っているという状況がわかります。
2.2 国民年金の平均月額【男女差】はおよそ4200円
- 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
- 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
女性の方が平均年金月額がおよそ4200円少ないことがわかります。
この差の背景には、保険料を納めた期間の違いが大きく影響しています。
女性は結婚や出産、育児などにより就業を中断しやすく、保険料を納めなかった期間(未納や免除など)が男性より多くなる傾向にあります。
その結果、受給額にも差が生じていると考えられます。