2025年9月30日、日本年金機構より、10月支払い分の年金から振込額が変更となる方へ向けて「年金振込通知書」を送付されています。
振込額、つまり手取り額が変わるということですが、なぜ、年度の途中にこのような変更があるのでしょうか。
この記事では、年金の振込額(手取り額)が変わる理由を解説します。
1. 10月から厚生年金や国民年金の「手取り額が変わる」人がいるって本当?
公的年金からは、税金や健康保険料・介護保険料などの社会保険料が特別徴収として差し引かれます。
一見すると年間を通じて同じ金額が引かれるように思われますが、実際には年度の途中で変動するのが一般的です。
その背景には、住民税や社会保険料の控除額が「仮徴収」と「本徴収」という二段階方式で決められていることがあります。
1.1 「仮徴収」って何?
年金から差し引かれる住民税や国民健康保険料といった社会保険料は、前年の所得を基準に算定されます。
ところが、その年の年間額が正式に決まるのは毎年6月から7月頃です。
そのため、金額が確定していない年度前半(4月・6月・8月の支給分)については、前年度2月と同じ金額が一時的に控除されます。
これが「仮徴収」と呼ばれる仕組みです。
1.2 「本徴収」って何?
前年の所得が確定し、その年度に納める社会保険料の年額が正式に決まると、徴収方式は「本徴収」へ移行します。
手順としては、確定した年額から仮徴収分の合計を差し引き、残額を年度後半の年金支給回数で均等に分けて差し引く仕組みです。
一般的には10月支給分から本徴収が始まりますが、自治体によっては8月から適用される場合もあります。
なお、前年の所得が増えていると、秋以降の手取り額が大きく減少することがあるため注意が必要です。
たとえば前年の課税所得が増加した場合などがこれに該当します。
- 不動産の売却や退職金の受け取りで、一時的に大きな所得があった
- 年金以外にパート収入や不動産収入などがあった
- 配偶者控除などの各種控除の適用がなくなり、課税対象額が増えた
こうした仕組みのため、前年の所得が増えている場合には、年度後半の「本徴収額」が前半の「仮徴収額」よりも大きく上がることがあります。
その結果、秋以降に差し引かれる額が増え、年金の手取りが想定以上に減少する可能性があります。
上記をふまえ、あらかじめ自身の状況を確認しておくことが安心につながるでしょう。
2. 公的年金制度の仕組みをおさらい!
続いて、公的年金の仕組みをおさらいしましょう。
日本の公的年金制度は「2階建て」とよく説明されます。
これは、基礎部分となる「国民年金」と、その上に積み重なる「厚生年金」で構成されているためです。
国民年金には、原則として国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入し、保険料(※1)は一律となっています。
これに対して、会社員や公務員などは国民年金に加えて厚生年金に加入し、収入に応じて算定される保険料(※2)を負担します。
また、国民年金は保険料を全期間(480か月)納めることで、65歳から満額(※3)を受け取ることが可能で、反対に納付に不足がある場合は、その分が差し引かれる仕組みになっています。
※1 国民年金保険料:2025年度は月額1万7510円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※3 国民年金の満額:2025年度は月額6万9308円