60代になると病気やケガのリスクが急激に高まり、介護の不安も現実的な問題となってきます。

現役時代とは大きく変わるリスクに対して、限られた予算の中でどのような保険選びをすれば良いのでしょうか。この記事では、60代の方が適切な保険選択をするための具体的な指針と、保険料負担を軽減しながら必要な保障を確保する方法をファイナンシャルプランナーの視点から詳しく解説します。

1. 60代から急増するリスクと保険で備えるべき課題

多くの人が定年退職を迎える60代。退職後のセカンドライフをどのように過ごすか計画をすると同時に、今までとは異なるリスクとも向きあう必要が出てきます。

1.1 病気リスクの急激な増加

60代以降、がんや生活習慣病のリスクが顕著に高まります。厚生労働省の統計によると、65歳以上のがんによる入院は24万人で、35~64歳の11万人から2倍以上に増加します。特に心疾患や脳血管疾患など循環器系疾患では、35~64歳の19万人から65歳以上で82万人と4倍以上の増加となっており、医療費負担への備えが不可欠となってきます。

1.2 介護費用への準備

生命保険文化センターの調査では、介護に要した一時的費用の平均は47万円、月額費用は平均9万円となっています。在宅介護では月額平均5.2万円、施設介護では月額平均13.8万円と大きな差があり、自身の希望する介護形態に応じた資金準備が必要です。

1.3 死亡保障の見直し必要性

現役時代に必要だった高額な死亡保障も、60代では家族構成に応じて見直しが必要です。株式会社鎌倉新書の調査によると、2024年の葬儀費用平均は118.5万円となっており、最低限の整理資金として検討する金額の目安となります。

2. 60代が優先すべき保険の種類と選び方

60代が最低限入っておくべき保険について、見ていきましょう。

2.1 医療保険:幅広い病気への基本的な備え

医療保険は入院・手術に幅広く対応できる保険です。一般的に、入院日数に応じて受け取れる「入院日額給付金」と、手術の際に受け取れる「手術給付金」がメインの保障となっています。

また近年の入院日数短期化に合わせて、入院1回に対して一時金を受け取れる「入院一時金」の保障も人気です。

生命保険文化センターの調査によると、60代の疾病入院保障の平均は日額8700円となっており、入院一時金の平均は18.7万円です。医療技術の進歩により入院日数は短期化傾向にあるため、日額保障に加えて入院一時金特約を組み合わせる人も増えてきています。保険料と保障のバランスを考慮し、日額5000円程度に設定し、入院一時金を付加するプランも検討してみましょう。

2.2 がん保険・特定疾病保険:重篤な疾病への集中対策

60代から急増するがんリスクに効率的に備えるため、がん保険や特定疾病保険の検討も必要です。がん保険の保障は、診断一時金タイプと治療給付タイプが近年の主流になりつつあります。

診断一時金タイプは、がんと診断されたときにまとまった一時金が支払われるものです。受け取ったお金の使途が自由で、治療費や生活費に柔軟に対応できます。治療給付タイプは、抗がん剤などのがん治療を受けた月ごとに給付金が支払われるもので、長引くがん治療に効率よく備えておくことができます。

また三大疾病保険では、がん、心疾患、脳血管疾患を包括的にカバーできます。保険会社によって保障範囲は異なるため、加入時には複数社で比較しておくことが大切です。

2.3 死亡保険:家族構成に応じた適切な保障額設定

60代になると、子どもの独立や住宅ローンの完済といったライフイベントを迎える人も多いでしょう。現役時代のように大きな死亡保障は必要なくなり、葬儀費用程度の保障で十分な場合もあります。ライフステージによって必要な保障を見極めることが大切です。

独身や夫婦のみの世帯では葬儀代程度の100~200万円、独立前の子どもがいる場合は生活費・教育費を考慮した保障額が必要です。貯蓄性のある終身保険は掛け捨て型と比べて保険料は割高ですが、一生涯続く死亡保障は安心材料になるでしょう。また死亡保障が不要になった場合は、解約して受け取った解約返戻金を老後の生活費として活用することもできます。