3.3 その3:65歳以上が対象「高年齢求職者給付金」
高年齢求職者給付金は、65歳以上の人が失業した際に支給される給付金です。
高年齢求職者給付金【支給要件】
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
- 支給要件:下記の全ての要件を満たした人
- 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
- 失業の状態にある:離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指す
高年齢求職者給付金【いくらもらえる?】給付金額
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
- 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額
なお、65歳未満が受け取る「失業手当」は4週間に一度ずつ失業認定を受けてから給付されるのに対し、この高年齢求職者給付金は一括で支給されます。
4. 働くシニア割合×年金改正×在職老齢年金
内閣府が公表した「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上の就業者数と就業率はいずれも上昇傾向に。
男女別に見た、各年齢層での就業者の割合は以下の通りです。
- 65~69歳:男性62.8%、女性44.7%
- 70~74歳:男性43.8%、女性27.3%
- 75歳以上:男性17.3%、女性8.5%
一般的な年金受給スタート年齢である「65歳以降」も、働き続けるシニアは増加中です。
なお、2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、在職老齢年金制度の見直しが盛り込まれました。
これにより、2026年4月から、厚生年金をもらいながら働く際に「年金が減額される基準額」が月51万円(※2025年度の金額)から62万円へ引き上げられます。
収入増による年金カットを懸念していたシニアの「働き控え」が緩和され、より柔軟な働き方が可能になると期待されており、厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。
5. まとめにかえて
今回は年金に上乗せして支給される公的なお金について紹介しました。
本記事でとり上げた給付金や年金等は、申請をしないと受け取れることができないものですので、各給付金等の支給対象者に該当する場合は、請求漏れがないよう速やかに請求手続きをおこないましょう。
なお、給付付き税額控除についてはまだ検討段階ですので、詳細は続報を待ちましょう。
昨今は、「年金だけで老後の生活は支えられないので、自助努力が必要」ということは、多くの方が共通して持っている認識と言えます。
このような給付金等を受け取れることは非常に有難い話ではありますが、まずは国の制度などに頼らなくても生活に困らないための生活基盤を築くことも大切です。
今は、NISAやiDeCoなど老後の資産形成を支援する制度は整っています。ただし、NISAやiDeCoを活用して投資信託などで資産運用をする場合、元本割れのリスクがあります。そのため、安易にNISAやiDeCoを始めるのではなく、まずはNISAやiDeCoのメリットとリスクをきちんと整理し内容を理解するところから始めましょう。
参考資料
- 自民党「もう一度信頼される自民党に 高市新総裁が就任会見」
- X「自民党広報」
- 日本年金機構「初めて老齢年金を請求するとき」年金請求書(国民年金・厚生年金保険 老齢給付)様式第101号
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
鶴田 綾