中国政府が恐れるのはスマホによる「人肉捜索」

中国で今、何が起きているのか(5)

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習近平が国家主席になってから汚職の摘発が激しさを増しました。大物の逮捕も相次いでおり、石油閥のドンと言われた周永康も無期懲役判決を受けています。なぜ習近平はこのような激烈な汚職の取り締まりを行っているのでしょうか。

共産党幹部に危機感

中国ではかねてから汚職は深刻な問題ですが、習近平政権になってからいきなりこのような大々的な摘発を行うようになった背景は、1つには鄧小平後の実力者である江沢民とそれにつらなる人々に対する権力闘争と言われています。

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自身の権力を固めるために、江沢民が築いた利権の構造に手を入れているというわけです。

しかし、より本質的な背景として、汚職に対する国民の怒りが共産党の一党独裁体制に対する脅威になりかねないという危機感を、共産党幹部が広く持っているということがあるようです。

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中国で流行する「人肉捜索(検索)」

中国では、政治体制と経済の矛盾がさまざまな問題を生んでいます。

共産党幹部が巨万の富を蓄える一方、都市に出稼ぎに来た農民工と呼ばれる労働者は満足な社会保障もないまま社会の底辺を支えています。汚職に対する庶民の怒りも大きく、社会への不満が高まっても不思議ではありません。

こうした中、最近流行しているのが「人肉捜索(検索)」です。

人肉捜索とは、共産党幹部らしき人の姿をスマートフォンで撮り、「給料で買えるはずのない高級時計をしている」とか「派手な宴会をしている」といった様子をインターネット上で暴露するものです。

スマートフォンの普及が中国政府を脅かす

厳重な情報統制を敷いている中国でも、スマートフォンが普及し何億という人が発する情報を完全に密閉することはできません。

「人肉捜索」で炎上、拡散し、標的となった共産党幹部が辞職を迫られる例が出るようになりました。最近では地方政府の幹部が高級レストランで食事をする時、窓際の席に座らないそうです。窓の外から写真を撮られるから、というのが理由です。

中国では、歴史的に王朝末期に民衆の間で自然発生的に動乱が起こる場合が多いことから(清朝末期の太平天国の乱など)、中国政府は人民の動向に気を使っています。中国政府が一番恐れているのは、米国でも民主運動でもなく、スマホを持った「人民」なのです。

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沢田 高志

慶応義塾大学大学院工学研究科修了。
日興證券(日興リサーチセンター)で化学、自動車などの日本株アナリストを経験した後、資産運用会社を経て三菱UFJ証券にて中小型株アナリストに。日経金融新聞のアナリスト・ランキング第3位〈2006年〉。
その後中国勤務を経て、東海東京証券の外国株アナリストに転身。中国、米国、アジアなどの産業・企業動向に通じている。