皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

インフルエンザの流行に加え、花粉症を発症している方もいるようです。マスクが手放せないですね。

さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。

  • 米下院でトランプ大統領の一般教書演説が一時拒否されるなど、政治的対立が、景気、市場に与える影響が懸念されている。
  • 米国の政治では、4年に一回の大統領選挙が大きなイベントであるため、大統領選サイクルという考え方で、各年を4つに分類して、株価の動向に違いがあるかを整理した。
  • 2019年が該当する「大統領選の前年」は、戦後の73年間では、上昇率が高く、下落した回数も1回に留まる。
  • 一方で、ニクソン大統領(当時)が辞任した1974年は、3割近い下落であったことにも留意したい。


米下院本会議場でのトランプ大統領の一般教書演説が一時拒否されるなど(2月5日に延期され実施される予定)、政治を巡る混乱が景気、市場に与える影響が懸念されます。

トランプ大統領も、民主党も、2020年の大統領選挙に勝利することが大きな目的であり、2020年に向けて、政治的な対立が一層先鋭化する可能性があることには注意が必要であると思われます。

米国では、4年に1回大統領選挙が行われるため、大統領選サイクルという考え方で、各年を4つに分類して、株価の動向に違いがあるかを整理します。1945年に第2次世界大戦は終了したため、1946年~2018年までの73年間を考えてみましょう。

まず、1946年以降の年間のダウ・ジョーンズ工業株価平均(以下、米国株)でみた場合、平均騰落率は+8%程度です。加えて73年間で、「上昇した年は51回、下落した年は22回」であり、「上昇する確率は約7割」となり、米国株市場は、長期投資という観点から魅力的な投資対象であると思われます。

次に、本題の大統領選サイクルという考え方で、各年を「①大統領選の年、②大統領選の翌年、③中間選挙の年、④大統領選の前年」という4つに分類してみましょう。

例示すると、トランプ大統領が選出された2016年が①、2017年が②、中間選挙があった昨年2018年が③、そして今年2019年は④となります。

図表1は、4つに分類した米国株市場の平均騰落率です。

図表1:米国株市場の騰落率
1946年~2018年:年次

出所:ブルームバーグが提供するデータをもとにアセットマネジメントOneが作成。
なお、①からリーマンショックがあった2008年を除いて計算した場合、+7.1%。


このデータをみるかぎり、「①大統領選挙の年(例:来年2020年)」の上昇率が一番低く、一方で、「④大統領選の前年(例:今年2019年)」の上昇率が一番高かったことが分かります。

また、 「④大統領選の前年(例:今年2019年)」 は戦後18回ありましたが、このうちわずか1回しか下落していません(たった1回の下落は2015年で、2.2%下落しています)。

今年、2019年のような「④大統領選の前年」の米国株の上昇率は高く、かつ下落した回数が少なく、株価は比較的堅調に推移したことが分かります。

これは、大統領選の年を前にして、景気や株価への注目度が高まり、与党、野党を問わず、株価上昇につながる政策が行われやすいことを示唆している可能性があります。

ただし、これらはすべて過去のデータであり、その時々の経済状況も異なりますし、型破りと言われることもあるトランプ大統領の二期目の大統領選の前年にも当てはまる規則性であるか、否かは判断が難しいところです。

戦後、米国株市場が2割超下落した年は、73年間で2回しかありません。

そのうちの1回はリーマンショックがあった2008年で、株価は約34%下落し、最大の下げ率となっています。そして、もう1回は、1974年の約28%の下落です。

この年は、ウォーターゲート事件による政治の混乱などから、ニクソン大統領(当時)は、辞任に追い込まれています。一部で報道されるように、仮に、トランプ大統領が弾劾に追い込まれるようなことがあれば、株価が不安定になる可能性にも留意が必要です。

(2019年1月29日 8:00頃執筆)

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柏原 延行