2. 【住民税非課税世帯】現金給付は本当に有効?
給付金は低所得者層の生活を直接支えられるのが強みですが、有効性については疑問視される声も少なくありません。効果面・実務面の2つから、給付金事業の有効性と、対照的な政策である「減税」との比較について解説します。
2.1 効果の面から見る
給付金は経済対策として、消費喚起や経済活性化が期待される事業です。しかし、その効果は限定的で、むしろ貯蓄にまわるケースが多いようです。
2023年に内閣府が公表したデータによると、2020年の特別定額給付金の支給5週前から10 週後までの期間の消費増加効果は22%、支給前月から2ヵ月後までの消費増加効果は17%でした。
貯蓄にまわってしまう主な理由としては、税や社会保険料などの負担増が続いたことや、決して安泰ではない財政状況による年金制度への不安などが考えられます。使えるお金が限られており、将来が見通せない状況であることから「もしものときに備えておきたい」「何かあったときのお金にする」といった心理が働いているのかもしれません。
2025年7月の参議院選挙では「給付か減税か」が争点になりました。与党は給付、野党は減税を掲げて臨みましたが、結果的に与党は敗れ、世論が給付より減税を望んでいることが明確になりました。
こうした状況からも、給付だけが正しい政策とは決していい切れないでしょう。これまでの慣習や財源にこだわる姿勢などを大きく見直し、その時代にあった政策が実施されることが求められています。
2.2 実務の面から見る
給付金事業は、実務面でも「スピード感のなさ」という課題があります。過去にも「迅速に」「速く」といったワードのもと実施されてきた給付金ですが、予算の決定から支給開始、給付の完了までには時間がかかっており、その間も食料品などさまざまな商品・サービスが値上げされている状況です。
給付が遅れる原因は、地方自治体の現場に係る事務負担の大きさです。実際に給付金事業が始まると、実務を担当するのは国ではなく地方自治体です。地方自治体では、適切な給付をするために以下のような作業を行います。
- 給付対象者の抽出
- 申請書類の送付
- 申請書の審査
- 問い合わせの対応
上記の作業には、時間だけでなく費用もかかります。超過勤務となれば人件費が発生し、書類の作成には印刷代や封筒の発注が必要です。給付金事業では問い合わせ専用のコールセンターを設ける自治体もありますが、コールセンターで働いてもらう人の人件費もかかります。結果的に「給付をするのに多くの費用と時間を費やす」という状況になってしまうのです。
こうした事務負担を減らすために有効活用したいのが「マイナンバーカード」です。公金受取口座を紐づけたマイナンバーカードで所得情報を把握し、対象者に直接振込ができれば、業務負担は軽くなります。しかし、現在のシステムではマイナンバーカード所得情報の反映に半年ほどの時間がかかり、どうしても対象となる人に申請書を記入してもらわなければならないのです。
対象的に減税は、法改正とシステム対応さえ進めば、手取りの増加を手早く実現できます。法案がまとまるまでに時間を要しますが、改正法案の施行後はスムーズに効果を実感できる可能性があるのです。