3. 年金、もらえる金額は増えても実質目減りしている?
公的年金は賃金や物価を考慮して年度ごとに見直しがおこなわれます。2025年1月、厚生労働省は2025年度(令和7年度)の年金額を、前年度より1.9%引き上げることを公表しました。
3年連続のプラス改定にはなりましたが、「マクロ経済スライド(※)」によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額は目減りしています。物価上昇に年金額が追い付けていないのです。
3.1 年金から何が引かれている?
またシニアの多くは、下記の税や社会保険料を老齢年金からの天引きで納めています。
- 介護保険料
- 公的医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度)の保険料
- 個人住民税および森林環境税
- 所得税および復興特別所得税
年金見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できますが、年金は「額面通りにはもらえない」点は意外な盲点かもしれません。
※マクロ経済スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ
4. まとめにかえて
今回は、厚生労働省の統計に基づき、60歳代(60歳代)から90歳代(90歳以上)までの平均年金月額を詳しく見てきました。厚生年金の平均月額は14万円~16万円台、国民年金は5万円台が実態であり、老後の生活資金を検討する上での重要な目安となります。
2025年度は1.9%のプラス改定となりましたが、マクロ経済スライドというしくみにより、物価上昇に年金額が追いつかず実質的に目減りしているという現実があります。さらに、年金受給額から介護保険料や住民税などの税や社会保険料が天引きされるため、「額面通りにはもらえない」という点をしっかり把握しておくことが大切です。
将来もらえる年金は、ねんきん定期便などで確認できる「見込み額」から、これらの天引き分を差し引いた額が実際の手取りとなります。年金は、公的な「人生のベースとなる資金源」です。今回の情報を通じて、年金受給の現実と制度の仕組みを正しく理解し、足りない分を補う資産形成や家計の見直しなど、前向きな老後への備えを進めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
矢武 ひかる