9月といえば、新年度に次いで転勤や転職などで引越しをされる方が増える時期です。

賃貸住まいの方にとって、新しい生活への期待に胸を膨らませつつ、頭を悩ませるのが「退去」の手続きではないでしょうか。

特に、賃貸物件の原状回復をめぐるトラブルは、予想外の出費に繋がることも…。費用がかかる引っ越し時期には、できるだけ避けたい問題ですね。

「普通に生活してついた汚れなのにルームクリーニング代を請求された」「ペットが傷をつけたと言われ、クロスの張替え費用を請求されたが納得できない」など、退去時の原状回復をめぐるトラブル事例について、国民生活センターの啓発内容をご紹介します。

9月に退去を予定している方も、これから引っ越しを考えている方も、ぜひ事前に知っておきましょう。

※今回ご紹介する内容は、独立行政法人国民生活センターの掲載許可を頂いております。

1. 【賃貸住宅の原状回復トラブル】相談件数は1万3000件以上

独立行政法人「国民生活センター」によると、賃貸住宅の原状回復トラブルにまつわる相談件数は2024年度で1万3000件を超えます。

  • 2022年度:1万2885件
  • 2023年度:1万3273件
  • 2024年度:1万3277件

2. 【賃貸住宅の原状回復トラブル】実際の相談事例

国民生活センターに寄せられた実際の相談事例を見ていきましょう。

2.1 マンションの退去時にクロスの全面張り替え費用20万円を請求された

30歳代女性のケースでは、約1年半居住した3LDK(家賃約10万円、敷金約20万円)の賃貸マンションを退去するときにトラブルが発生しました。

退去時の立会いの際、クロスは退去する際にいつも全面張替えをしていると言われたのです。納得できないと伝えたところ、張替え費用が当初よりも減額されましたが、各部屋のクロス張替え費用約14万円を請求されることに。

さらに、契約書の特約にあるハウスクリーニング費用も追加となり、合計で約20万円を請求されました。

ハウスクリーニング費用は契約時に説明があり、契約書にも明記されているため支払うことにしましたが、クロス張替えについては契約書に記載がなく、また「入居した時からあった傷」なども費用に含まれていたことから、金額に納得できないそうです。

2.2 アパートの退去後に高額な原状回復費用90万円を請求された

また別の20歳代男性の事例では、4年前に築17年の賃貸アパート(家賃約7万円、敷金礼金なし)に入居し、退去したあとでトラブルにあいました。

退去後に管理会社から清算書が届き、原状回復費用として約90万円を請求されたのです。

到底納得できずに見直しを要求したところ、70万円までに減額となりました。

とはいえ、入居当時から室内の壁紙やフロアマットは汚れており、当時の管理会社の担当者もそのことは確認していたとのこと。さらに退去にあたり、立会いはなかったそうです。

通常の清掃を行い、普通に住んでいただけなのに費用を請求されたことに対し、相談がよせられました。

他にも事例はあります。

  • 6年半居住した賃貸マンションを退去した。原状回復費用として、クロスの張替えなどの見積書が届いたが、高額で納得できない。
  • 賃貸アパートの退去時、ペットが傷をつけたと言われ、クロスの張替え費用を請求された。傷の写真を見たが、ペットが付けた傷かはわからず納得できない。
  • 賃貸マンションの入居時にルームクリーニング代を支払った際、「退去時のルームクリーニング代は不要」と言われたにもかかわらず、退去時に請求され納得できない。
  • 賃貸アパートを退去後、原状回復費用の清算書が届いた。入居時から傷ついていた床等の原状回復も求められ納得いかない。

主に原状回復にまつわる費用を請求されたものの、その金額や理由に納得がいかないというものが多いです。

引っ越しの経験が少ないと「こんなにかかるのか」と驚くこともありますし、経験が多いと「本当に支払わないといけない費用なのか?と疑いたくなることもありますね。

国民生活センターでは、こうした消費者に対するアドバイスを啓発しています。

3. 【賃貸住宅退去時トラブル】どう対処する?

賃貸住宅の退去時には、原状回復のトラブルが起こる可能性があります。

国民生活センターではポイントとして以下を紹介しています。

3.1 対処法1:契約書類の記載内容をよく確認

まずは基本ですが、契約する前に契約書類の記載内容をよく確認することが大切です。

管理会社や不動産業者、大家などの貸主側から説明される契約内容をよく聞き、わからないことがあればその場で確認するようにしましょう。

特に、禁止事項や修繕に関する事項のほか、「ハウスクリーニング費用は全額借主負担」など退去する際の費用負担に関する事項は確認必須です。

3.2 対処法2:記録に残す

マンションやアパートなどに入居する時には、賃貸住宅の現在の状況をよく確認しましょう。このとき記録に残すことがポイントです。

  • キズや汚れなどがないか
  • エアコンなど備え付けの設備がきちんと動作するか

など、できる限り貸主側と一緒に確認しましょう。写真を撮ったりメモを取ったりするのもいいですね。

3.3 対処法3:入居中にトラブルが起きたらすぐに相談

入居中にトラブルが起きた場合には、すぐに貸主側に相談することも大切です。

例えばエアコンや給湯器など、入居時に設置されていた機器に不具合や故障が起こった場合などが該当します。他にも、雨漏りや水漏れなどの賃貸住宅の使用のために必要な修繕は、原則として貸主側に修繕の義務があります。

反対に貸主側に無断で修繕を行うと、退去時の精算の際にトラブルになる可能性があるので注意しましょう。

3.4 対処法4:退去時には精算内容をよく確認

入居時と同様に、退去する時もできる限り貸主側と一緒に、賃貸住宅の現状を確認しましょう。写真を撮ったりメモを取ったりして記録を残すことが大切です。

また、万が一納得できない費用を請求された場合には、貸主側に費用の明細等の説明を求め、費用負担について話し合います。このとき、国交省のガイドラインに示されている基準が参考になります。

原則として、「年月の経過による損耗や普通の使い方をしていても発生する汚れやキズ」などの修繕費用については、借主が費用を負担する必要はないと考えられています。

もしトラブルになった場合、消費生活センター等が相談窓口になります。消費者ホットライン「188(いやや!)」です。

4. まとめにかえて

賃貸住まいの方は、引っ越しに伴い退去の手続きが発生します。

できれば入居の時点でトラブルを想定し、記録に残しておくように心がけましょう。

国民生活センターではさまざまな相談事例が掲載されているので、あらかじめ備えておきたいですね。

参考資料

太田 彩子