資産形成の第一歩としてインデックスファンドを購入したという方は多いのではないでしょうか。その一方で、「インデックスファンドをいくつか購入したものの、次をどうしてよいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、楽天証券経済研究所 ファンドアナリストの篠田尚子さんと三井住友アセットマネジメント株式会社 オンラインマーケティング部長の宗正彰さんに資産形成におけるアクティブファンドの活用法について話を伺いました。

インデックスファンドを持っていれば資産形成はOKなのか

―――投資信託の売れ筋ランキングを見るとインデックスファンドが人気です。資産形成はインデックスファンドだけ保有し、長期で運用しておけばよいのでしょうか。

楽天証券経済研究所・篠田尚子(以下、篠田):インデックスファンド自体はノーロード(買付手数料無料)で、また信託報酬の水準も低い投資信託が多く、商品としては魅力的です。ただし、個人投資家の皆様の中にはインデックスファンドの使い方が適切でなかったり、また間違った認識をされていることも多いようです。

―――といいますと、どのようなことでしょうか。

篠田:たとえば、インデックスファンドを複数保有しているといっても、日経225とTOPIX、また全世界株式と先進国株式といった組み合わせなど、資産内容が重複するインデックスファンドを保有しているケースがあります。そうした状況にあるにもかかわらず資産として分散していると勘違いしているケースがあります。

また、インデックスファンドは一般的なアクティブファンドと比較して「低コスト」であるということは間違いないのですが、必ずしも「低リスク」ではないということは十分認識しておくべきです。インデックスファンド内では複数の銘柄などに分散投資をしていますが、資産全体のリスクは残ります。

加えて、国内外の株式や債券、REITといった様々な資産のインデックスファンドを保有していても、それぞれをポートフォリオ全体としてどの程度の割合保有しているか認識できていないということもあります。

複数の資産を持っている場合でも、リバランスが必要となりますが、その際にどこまで調整ができているのかというのは個人差があるのではないでしょうか。インデックスファンドを複数購入したものの、十分にメンテナンスができていないという方もいらっしゃると思います。

目的があってこその資産形成

―――インデックスファンドもただ買って持っていればよいというわけでなさそうですね。インデックスファンドも使い方次第ということでしょうか

三井住友アセットマネジメント・宗正彰(以下、宗正):その通りだと思います。インデックスファンドを組み合わせてポートフォリオを形成するには、投資家がリスクについて理解することが必要です。リスクはリターンの裏返しですから、資産形成を考える際には、自分がどこまでのリスクをとることができるのか(リスク許容度があるのか)を考える必要があります。

インデックスファンドを購入して資産形成を始めてみたという方は多いかもしれませんが、私は、投資経験が長い人ほどインデックスファンドを上手に使われているのでは、と考えています。資産運用の際に投資経験が長い方は、日本株などの自分にとってなじみのある資産については、自らが選択した個別銘柄に投資をしながら、その一方で個人投資家としてはアクセスが難しい国や地域の資産に関してはインデックスファンドでそのリターンを狙いにいくというスタイルです。

もっとも、皆さんは何らかの理由があって、資産形成を始めるわけです。その目的を達成するためにはいつまでにいくら必要で、そのためにはどれだけのリスクをとらなければならないのかを考えることが重要です。そしてその目標を実現するためにはインデックスファンドだけでよいのか、もしくはアクティブファンドも保有していかなければならないのか、などの議論があるべきだと思います。

篠田:資産形成の目的については個人によって様々です。また、現在おかれている状況、たとえば、現在の保有資産や年齢、家族構成なども違って当然です。そうした前提条件が異なる中で一様の資産形成の答えがあるわけではありません。

たとえば、現在50歳代で定年退職までに時間が限られている、そして老後資金の準備が足りていないという場合には、資産形成ものんびり、じっくりというわけにはいかないでしょう。そうしたケースではリスク許容度を認識した上でアクティブファンドを活用するということも必要でしょう。

また、定年退職後に退職金を手にした場合でも、資産を取り崩しながらも増やしていきたいというケースもあるでしょう。その場合には、減らさないように運用することが重要となってきます。その際にはリスクをコントロールしながらの運用が必要で、リスク調整型のバランス型ファンドなどが便利といえます。

アクティブファンドの活用法

―――結局のところ、アクティブファンドはどう使えばよいでしょうか。

宗正:大きく二つあります。一つは地域型のアクティブファンド、もう一つはセクター型のアクティブファンドです。地域型では新興国などの経済成長率が高い国や地域の株式に特化したファンドであったり、セクター型はグローバルで成長率の高いテクノロジー関連企業などに投資をするアクティブファンドなどを挙げることができます。セクター型のアクティブファンドはテーマファンドと思われがちですが、そうではありません。テーマファンドの中には株式市場の一時的なブームを取り扱うものもあるのは事実ですが、ここで強調したいのは、産業として中長期で成長するセクターを選ぶということです。

篠田:インデックスファンドでもそうした国や地域、また該当するセクターの株式などは含まれますが、ポートフォリオ全体で見るとその比率は薄まってしまいがちです。インデックスファンドをお持ちの方でも、追加的にそうした国や地域、また関連企業の成長とともに資産価格の上昇を享受したい場合にはエッセンスとして保有を検討するのは、「あり」ではないでしょうか。

宗正:篠田さんのご指摘に付け加えさせていただけるのならば、アクティブファンドを保有することで、資産運用や資産形成に興味が持てる機会とすることができるのではないでしょうか。資産形成を単に人生の目的を達成するためのプロセスとするのではなく、ぜひ資本市場と向き合う楽しさを感じていただければと思います。

LIMO編集部