4. 【国民年金と厚生年金】いまどきシニアは年金だけでは苦しい
4.1 60歳代・70歳代の約3割が「年金だけでは日常生活費も払えない」
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2024」によると、二人以上世帯において「年金だけでは日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しているのは、60歳代が32.6%、70歳代が30.6%となっています。
「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?
年金のみでは「ゆとりのある生活」が難しいと考える理由として、60歳代の63.3%、70歳代の62.8%が「物価上昇による支出の増加」を挙げており、これが最も多い理由となっています。
次いで、60歳代の28.3%、70歳代の34.8%が「医療費の負担増加」に対する不安を挙げています。また、「介護費の負担増加」に対しても、60歳代の18.1%、70歳代の26.4%が不安を示しています。
多くのシニア世帯が、年金だけでは生活にゆとりを持てない現状と向き合いながら、長い老後生活をやりくりしている様子がうかがえます。
5. 【平均寿命】男女で約6年違う
私たちは日頃「平均寿命」という言葉を何気なく使っていますが、これは0歳の平均余命を指します。
厚生労働省が2025年7月25日に公表した「令和6年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.09年、女性が87.13年でした。
前年と比較すると、男性は横ばい、女性はわずかに下回りました(▲0.01年)。また、平均寿命の男女差は6.03年で、前年より▲0.01年とわずかながら縮まっています。
過去の推移も見てみましょう。
- 昭和22年:男50.06 女53.96 男女差3.90
- 昭和25-27年: 男59.57 女62.97 男女差3.40
- 昭和30年: 男63.60 女67.75 男女差4.15
- 昭和35年: 男65.32 女70.19 男女差4.87
- 昭和40年: 男67.74 女72.92 男女差5.18
- 昭和45年: 男69.31 女74.66 男女差5.35
- 昭和50年: 男71.73 女76.89 男女差5.16
- 昭和55年: 男73.35 女78.76 男女差5.41
- 昭和60年: 男74.78 女80.48 男女差5.70
- 平成2年: 男75.92 女81.90 男女差5.98
- 平成7年: 男76.38 女82.85 男女差6.47
- 平成12年 :男77.72 女84.60 男女差6.88
- 平成17年:男78.56 女85.52 男女差6.96
- 平成22年:男79.55 女86.30 男女差6.75
- 平成27年 男80.75 女86.99 男女差6.24
- 令和2年 男81.56 女87.71 男女差6.15
- 令和3年 男81.47 女87.57 男女差6.10
- 令和4年 男81.05 女87.09 男女差6.03
- 令和5年 男81.09 女87.14 男女差6.05
- 令和6年 男81.09 女87.13 男女差6.03
長期的なデータを見ると、男女ともに平均寿命が大きく延びており、「人生100年時代」が現実味を帯びてきたことを実感することができます。
長くなった老後を豊かに過ごすためには、現役時代からの計画的な貯蓄や資産形成、さらには公的年金制度への理解が大切となってくるでしょう。
6. まとめにかえて
今回は公的年金制度の仕組みと平均受給額について解説しました。データが示すように、年金だけでゆとりのある老後を送ることは簡単ではないのが現実です。特に、物価上昇や医療費の不安を抱えているシニアが多いという調査結果は、決して他人事ではありません。
年金の平均受給額には男女差があり、特に女性は金額が少ない傾向にあります。一方で、平均寿命は男性より女性の方が約6年長く、老後の期間も長くなります。そのため、女性はより一層、公的年金に頼りすぎない資産形成の重要性が高まると言えるでしょう。
老後を豊かに過ごすためには、現役時代から計画的に資産形成を始めることが大切です。新NISAやiDeCoなど、少額から始められる制度も整ってきています。もちろん、投資には元本割れのリスクもありますが、正しい知識を身につけ、自分に合った方法で資産を育てることで、漠然とした将来の不安を少しずつ解消できるはずです。人生100年時代と言われる現代、老後の生活を自分らしく、そして安心して送るために、今日からできる一歩を踏み出してみるのはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」
野平 大樹