物価高が続いています。
ガソリン代や電気・ガス料金の補助など、さまざまな対策が講じられていますが、食品や生活必需品を中心とした値上げは止まらず、家計が苦しい状況に大きな変化はないといって良いでしょう。
とくに収入の中心が給与から年金にシフトしたばかりの60歳代シニアは、他の年代と比べてより厳しい状況下にあるかもしれません。
子どもの教育費や住宅ローンといった大きな支出は減る一方で、日々の生活費はそれほど大きく変わらないため、「収入は減ったのに、支出はあまり減らない」というアンバランスな状態に陥りやすいからです。
本記事では、国や自治体が設けている給付金や手当など支援策をご紹介します。シニア世代を対象としたものに絞ってご紹介しますので、「自分は給付金の対象になるのか」、「65歳以降も働きたいが何か手当を受けられるのか」と参考までに確認してみてください。
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1. 【申請しないともらえない】「年金に関連する」公的なお金 2つ
老齢年金を受け取りながら、条件を満たすことで通常の年金に上乗せして受け取れるお金が「2種類」あります。
1.1 「年金に関連する」公的なお金1:加給年金
1つ目が「加給年金」です。
これは「年金版の扶養手当(家族手当)」ともいえる制度で、一定の要件を満たした場合に老齢厚生年金を受給している人が、年下の配偶者や子どもを扶養しているときに、年金額に上乗せして支給されます。
加給年金《支給要件》
- 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年
加給年金は、上記で示した条件に該当するタイミングで「65歳未満の配偶者」や「18歳到達年度の末日までの子、あるいは1級・2級の障害状態にある20歳未満の子」がいる場合に、年金に上乗せして支給されます。
ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間20年以上)、退職共済年金(組合員期間20年以上)を受け取る権利を持っている場合や、障害厚生年金・障害基礎年金・障害共済年金などを受給している場合には、配偶者加給年金額は支給停止となります。
加給年金《2025年度の年金額》
参考までに、「加給年金」の年金額(2025年度の年額)は以下のとおりです。
- 配偶者:23万9300円
- 1人目・2人目の子:各23万9300円
- 3人目以降の子:各7万9800円
老齢厚生年金を受給している人については、生年月日に応じて配偶者の加給年金額に3万5400円~17万6600円の特別加算が上乗せされます。
加給年金は、対象となる配偶者が65歳に達すると支給が終了します。
ただし、その配偶者が老齢基礎年金を受給する際に一定の要件を満たしていれば、「振替加算」として老齢基礎年金に加算されます。
1.2 「年金に関連する」公的なお金2:老齢年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給している人が一定の所得要件を満たした場合に受け取れる制度で、「老齢」「障害」「遺族」のそれぞれに給付金が用意されています。
ここでは、その中でも「老齢年金生活者支援給付金」に焦点を当てて解説していきます。
老齢年金生活者支援給付金の支給要件
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの人は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前生まれの人は88万7700円以下(※2)である。
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた人で78万9300円を超え88万9300円以下である人、昭和31年4月1日以前に生まれた人で78万7700円を超え88万7700円以下である人には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
老齢年金生活者支援給付金の給付基準額
2025年度の老齢年金生活者支援給付金の基準額は月額5450円となり、前年度比で2.7%引き上げられました。
この基準額をもとに、保険料の納付状況に応じて給付額が算定され、①と②を合計した金額が支給されます。
老齢年金生活者支援給付金の給付額の計算式
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5450円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1151円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
例)国民年金保険料を全期間(40年間)納付した場合、2025年度は「月額5450円=年額6万5400円」の給付金が支給されます(昭和16年4月1日生まれまでの人は計算が異なります)。
なお、保険料免除期間に乗ずる金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変わることも留意しておきましょう。