少しずつ春が近づき、そろそろ新生活の準備を始める方もいらっしゃるのではないでしょうか。進学や就職、転勤を踏まえ、引っ越しを考えている方も多いかもしれません。

ところでみなさんは「引っ越し難民」という言葉をご存じですか?

引っ越し難民って?

引っ越し難民とは、「普段と比べて高額な料金を払わないと引っ越しできない」「引っ越ししたい時期に引っ越しできない」といった状況に陥った人々のことを指します。

このワードの認知度が上がったのは、2018年の3月から4月にかけての時期。引っ越し料金が通常期の3倍以上にも及んだり、引っ越し予約が数カ月先になったりするなど、大きな混乱を呼んでいました。

そして今年は、業界大手の一社である「ヤマトホームコンビニエンス」が、2018年に発覚した過大請求に関する不祥事を受けて、引っ越しの受注を停止しています。素人目には、他社にとっては「ライバルが減った」と喜ぶようなシチュエーションに映るのですが、現実はそうはいかないようです。実際、この余波を受けて、さらなる「引っ越し難民」が現れるとも予想されるため、国土交通省が「引っ越し時期を分散するように」と異例の呼びかけを行うなど、話題となっているのです。

今年もすでに影響が……

去年の3月ごろには、ネット上に「引っ越し難民」と思われる人々の深刻な叫びが上がっていました。

「引っ越し見積もりが高い!引っ越しできないかも……」
「洗濯機ない、冷蔵庫ない、服もない、引っ越し難民新居で苦戦中」
「単身引っ越しで30万ですよ」

など、予定していた時期に引っ越しするのに一苦労だったようです。特に銀行などでは、異動は頻繁にあり、担当者による不正のもみ消しを防ぐためもあって、辞令がおりてから10日や2週間といった短期間で新勤務地に着任という会社も珍しくありません。SNSなどでは、「しばらくホテル暮らしするしかない」など、銀行員とみられる人たちの悲痛な声もみられました。

ちなみに、今年の引っ越しへの影響も少し出始めているようで、ネット上では、

「最初に見積もりしてもらおうと思ってた業者はすでにトラックの空きがないっていわれた」
「1時間くらいの距離なのに見積もり60万っていわれた」

という声もちらほら上がっているようです。

「引っ越し難民」問題、急浮上のなぜ?

そもそもなぜここ1、2年で「引っ越し難民問題」が浮上したのでしょうか? その理由をたどっていくと、つまるところ「ドライバー不足」に行き着くようです。しかし、それがここ1、2年で発生したのには、大きな「流れ」が存在します。

まず、ネット通販の拡大により、宅配便の需要は増加傾向にあります。また、オリンピックを目前に建築資材の運搬業務も増加しており、物流業界の業務はいっぱいいっぱいの状態だといわれます。

それに伴い、業界全体でドライバーへの負担が大きくなり、休日返上・長時間残業など、劣悪な労働環境が常態化しました。そして2017年、業界大手であるヤマト運輸に、労働基準監督署から是正勧告が出されました。

ヤマト運輸はこれを受け、荷物の受け入れの制限、配送料金の値上げ、労働時間の緩和、賃金改善などの働き方改革を押し進めました。結果、多くの引っ越し業者のドライバーが、より労働環境・条件のいいヤマト運輸へ転職したことなどもあり、全体的に「引っ越しドライバー不足」になってきたという状況です。

現在も物流業者の人手不足は続いており、ヤマト運輸に限らず、引っ越し系ドライバーから物流系ドライバーへ流出する数は少なくないようです。物流業務は引っ越し業務よりも身体的・責任的な負担が少ないといわれることも原因となっているとのことです。

対応策はあるのか

引っ越し難民が増加する可能性があるとはいえ、昨年の騒動を踏まえて、業界全体でも対策を練っているようです。

たとえば、引っ越し業者のトラックの空きスペースをシェアするサービスが立ち上がりました。ほかにも、既存業者が法人を中心に引っ越す時期をずらすことを呼びかけたり、学生アルバイトや女性・シニアなどをスタッフとして積極的に採用したり、交通の利便性が高い場所に「サテライトオフィス」を設置したりなど、積極的な動きがあるようです。

また、長期的な視点として、人手不足の解消のために育成制度を設け、ドライバーの育成を行ったり、繁忙期において賃金を改善するなどの働き方改革も進んでいたりするようです。

「自分で引っ越し」という最終手段も

とはいえ、株式会社エイチームの調査によると、引っ越し業者の約半数以上が、昨年同様もしくは昨年以上の「引っ越し難民」が発生すると見込んでおり、安心はできないようです。

そのため、場合によっては引っ越し業者を利用する以外の対策を講じる必要があるかもしれません。たとえば、ダンボールで運べる程度の量の荷物であれば、宅配業者を利用することもできます。また、レンタカーなどを使って自身で引っ越しするという手段もあるでしょう(もちろん、時期によってはトラックが借りづらくなるかもしれませんが)。

ともかく、引っ越しの予定がある方は、早めに動き出しておいたほうが無難のようですね。

クロスメディア・パブリッシング