3. 65歳でリタイアしたときの生活費

65歳でリタイアしたとき、老後破綻しないためには生活費はいくらくらいに抑えればいいでしょうか。貯蓄と年金のすべてを生活費に充てると仮定して、シミュレーションしてみます。

【前提条件】

  • 夫婦2人世帯で65歳以降の生活期間は30年(360ヶ月)
  • 夫婦2人の年金額は22万円(男性の厚生年金の平均+女性の国民年金の平均)
  • 世帯の貯蓄額2500万円(65歳以上・2人以上世帯の平均)

貯蓄を30年にわたって均等に取り崩すとすると、1ヶ月あたりの生活費は次の通りです。

  • 1ヶ月あたりの生活費=22万円+2500万円/360ヶ月=約29万円

生命保険文化センターのアンケート調査結果では「ゆとりある老後生活費は月37万9000円、老後の最低日常生活費は月23万2000円」となっており、両者の中間的な生活費は確保できることになります。

ただし、葬儀費用や病気・介護への備え、家の改修費などの臨時費用を考慮して、一定額の貯蓄を残すことも検討してみましょう。

また、貯蓄額と年金額は世帯によって大きく異なるため、自分の世帯に当てはめて生活費の目安を計算してみましょう。

65歳でリタイアした場合、臨時費用も考慮した1ヶ月あたりの生活費は次の通り概算できます。

  • 1ヶ月あたりの生活費=年金額+(貯蓄額ー臨時費用)/360ヶ月

シミュレーションの結果を基に、65歳でリタイアしても大丈夫か、仕事を続けた方が安心かを検討してみましょう。リタイア後に負担の少ないアルバイトやパートで家計を補うというのも選択肢です。

4. (参考)65歳以上の就労について

65歳以上の就労について、参考までに現状を紹介します。

最初は、65歳以上の人の就業率です。内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳から69歳までの人の就業率は2020年に50%を超えて上昇傾向にあります。2024年度は次の通りです。

  • 65歳~69歳の就業率:54.9%
  • 70歳~74歳の就業率:35.6%
  • 75歳以上の就業率:12.2%

次に、65歳以上の就労に関する国の施策です。

国では2021年4月に「高年齢者雇用安定法」を改正して「70歳までの就業機会確保」を企業の努力義務としました。改正によって「働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるように高年齢者が活躍できる環境の整備」を目指しています。

少子高齢化による人手不足や国の施策などによって、高齢者が働ける環境が広がりつつあります。

リタイヤして悠々自適に暮らすか、やりがいや経済的な安定を求めて仕事を続けるか、メリットとデメリットをきちんと比較検討し、悔いのない選択をしましょう。

5. まとめ

厚生年金の平均額は月14万6429円、国民年金は月5万7584円です。また、65歳以上・2人以上世帯の平均貯蓄額は2509万円、中央値は1658万円です。

65歳でリタイアを検討するときは、貯蓄と年金でどれくらいの生活費を賄えるかをシミュレーションすることが重要です。

元気なうちは仕事を続ける、リタイア後に負担の少ないアルバイトを行うなども選択肢として検討し、経済的な見通しを立ててから決断しましょう。

参考資料

西岡 秀泰