年金を受け取りながら働くシニア世代が増えています。内閣府によると、65歳以上の就業者数・就業率は上昇し続けており、60歳代後半の男性は約6割が、女性は約4割が仕事をしている状況になります。
掛け持ち勤務も珍しくなくなった今、65歳以上でも複数の職場を組み合わせて雇用保険に加入できる「マルチジョブホルダー制度」が注目されています。この制度を使えば、失業時の給付や介護休業、学び直しのための教育訓練給付なども受けられる可能性があります。今回は内閣府や厚生労働省の最新データをもとに、この制度の条件やメリット、手続き方法をわかりやすく解説します。
《雇用保険の裏ワザ》「マルチジョブホルダー制度」とは?
従来の雇用保険制度は、原則として1つの事業所で「週の所定労働時間が20時間以上あり、かつ31日以上の雇用見込みがあること」が加入条件です。これに対し、「雇用保険マルチジョブホルダー制度」では、以下の3つの条件をすべて満たす場合に、雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができます。
- 複数の事業所で雇用される65歳以上の労働者であること。
- 2つの事業所の週所定労働時間を合計して20時間以上であること。ただし、1つの事業所での週所定労働時間は5時間以上20時間未満である必要があります。
- 2つの事業所それぞれの雇用見込みが31日以上であること。
たとえば、65歳以上の労働者で、
- 事業所Aで週15時間
- 事業所Bで週8時間
- 事業所Cで週6時間
のように複数の職場で合計週20時間以上働いており、それぞれの事業所で31日以上雇用見込みがある場合、この制度の対象となります。また、3つ以上の事業所で働いている場合、本人が雇用保険に加入する2つの事業所を選んで手続きを行います。