数年前に「老後2000万円問題」が注目されたことで、年金だけでは老後の暮らしに不安を感じる人が増えてきました。
実際、厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、年金のみで生活している人は全体の43.4%にとどまり、多くの高齢者が年金だけでは生活を賄えていない実態が明らかになっています。
このような背景から、政府は2019年より、所得の少ない年金受給者を対象に「年金生活者支援給付金」を支給する制度を導入しました。
この給付金は一度きりではなく、条件を満たす限り継続して受け取ることができるため、生活を支える制度として重要な役割を果たしています。
本記事では、年金生活者支援給付金の一つである「老齢年金生活者支援給付金」の内容や受給条件について詳しく紹介します。
1. 【年金のリアル】シニアが受け取っている「厚生年金・国民年金」の平均はいくら?
はじめに、現在のシニア世代が受け取っている「年金の平均受給額」を見て、老後の主な収入源となる年金実態を把握していきましょう。
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金・厚生年金それぞれの平均年金月額は下記のとおりです。
1.1 【国民年金の平均受給額】
- 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
- 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
1.2 【厚生年金の平均受給額】
- 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
※国民年金の金額を含む
国民年金の平均受給額は月約5万円、厚生年金では約14万円とされており、いずれも生活費としては十分とは言えない水準です。
総務省「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、65歳以上の単身無職世帯における消費支出は月14万9286円となっています。
上記はあくまで平均的な消費支出ですが、国民年金のみでは明らかに赤字となり、厚生年金を受給していても、生活に余裕があるとは言い難いです。
このように、年金だけでゆとりある暮らしを実現できる高齢者は多くなく、生活の厳しさを感じている世帯も少なくありません。
そうした状況を支援するため、政府は年金とは別に給付金を支給する制度を設けています。
次章では、国から支給される給付金「年金生活者支援給付金」について見ていきましょう。