次に、私立大学の収支状況を見てみましょう。ここでは、帰属収入(納入学費、寄付金、補助金等)から支出(人件費、教育研究費、減価償却費などほぼ全ての費用)を差し引いた「帰属収支差額」が重要です。これは、一般企業(金融を除く)の“営業利益”に近いものと考えていいでしょう。

この帰属収支差額がマイナスの大学、つまり、運営費用を学費収入等で賄えない大学は、平成4年度の52校(全体に占める割合13.8%)に対して、その23年後の平成27年度は243校(同40.8%)へと増加しています。全体の約4割超が“営業赤字”という状況です。

また、帰属収支額に対する割合(=帰属収支差額比率、全学合計)は、同じく19.5%から3.5%へ大幅に悪化しました。一般事業会社に例えれば、営業利益率が23年間で19.5%から3.5%へと大幅悪化したということです。

まだ公表されていない平成28年度以降はさらに悪化している可能性もあります。

短期大学の状況はさらに厳しく、約6割が“営業赤字”

ここまで論じてきた私立大学の対象は4年制大学です。実は、短期大学になると、さらに厳しい現状を見ることができます。

平成29年度(以下同)に80%超の入学定員充足率を確保している短大は68.8%となっており、短大全体の3割兆が▲20%超の定員割れです。また、「帰属収支差額」がマイナスの比率は56.8%に上っており、6割近い短大が“営業赤字”なのです。短期大学の存在価値が問われていると言ってもいいでしょう。

センター試験の志願者数は4年ぶりの減少、この傾向は来年以降も続く?

こうした収支状況を見ると、学生数の減少が大学の経営状況を大きく悪化させてきたことが明確に分かります。そして、これにさらなる追い打ちをかけそうなのが、『大学の2018年(平成30年)問題』です。

これは、18歳人口の減少と大学進学率の頭打ちにより、2018年から大学志願者数の大幅減少が予測される問題を指しています。実際、来週実施のセンター試験の志願者数は4年ぶりの減少となりました。

この傾向が来年以降も続くなら、仮に、大学側が入試合格ラインをもう一段引き下げても、入学者数がいっそう減少することは不可避と言われています。大学の生き残りをかけた生存競争は、いよいよ本番を迎えたと考えられます。

こんな暗い話をしてから言うのも不謹慎かもしれませんが、何はともあれ、受験生の健闘を祈ります。

葛西 裕一