「元本確保型投資信託」が元本保証できない理由

そもそも投資信託は元本保証商品ではない

日本で販売されている投資信託(ファンド)は約5000本と言われています。毎月30~40本の新規ファンドが設定され、ほぼ同数のファンドが償還されます。したがって、世の中で出回っているファンド数は、ほぼ5000本とほぼ毎年変わりません。

投資家はこれだけの中から選ぶわけですから、まずご自身で目的に合ったファンドを選ぶというのは至難の業と言っていいでしょう。

さて、この膨大な数の投資信託の中で日本人好みなファンドのカテゴリーがあります。いわゆる、「元本確保型」と呼ばれる、ファンドが償還される際に元本が100%で戻るとされるファンドです。似たようなファンドでは“下値防衛”型とか“最低保証”型というのもあります。

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そもそも、投資信託は株式や債券に投資するリスク商品なので、元本が保証されるものではありません。にもかかわらず、「元本確保型」ファンドは時を経て、周期的にブームになります。

元本確保型が一般投資家に受け入れられる理由は簡単で、最終的に元手が返ってくるという期待があるからで、リターンは欲しいが損はしたくないという投資家心理をうまく突いています。

もっとも、元本保証が目的なのであれば、初めから預金で運用すべきなのですが...。

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元本確保型ファンドの仕組み

さて、元本確保型にはいろいろなパターンがあります。最もシンプルな仕組みは、ある一定期間の投資期間で投資信託を設定し(単位型投信)、この期間で償還時(満期時)に当初投資した元本100が、償還時も100で戻されるように設計したものです。

たとえば、元本100、運用期間10年、この期間の金利が年利1%だったとします。10年間毎年1%の金利が入ってきますので、当初の元本のうちの90%分(90)をこの債券で運用し、残りの10%分(10)を株式で運用します。このパターンですと、10年後最悪のケースとなって、株式部分の価値がゼロになったとしても、債券の元本と利息10年分で100(90+1×10)になりますので、めでたしめでたし元本100は確保されます。

図表1:元本確保のしくみ

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すなわち、元本確保型が本当に元本を確保するためには、10年後に絶対100以上になり得るような資産で運用しないといけません。

また、投資信託であれば信託報酬が年間1~2%はかかってきますので、その分も含めて100で返すには、相当高い利回りと信用力を持つ債券でしか運用できません。

日本の投資信託は円建てです。円ベースで元本を確保しようとすると、日本の10年国債の利回りはほぼゼロ%ですから、この仕組みを踏襲すると株式には運用できませんし、投資信託の器で運用すると信託報酬もゼロ%でないと成り立たないスキームです。

結局、元本確保が目的なら、初めから預金か国債で運用するのが筋で、わざわざ投資信託を買う必要はないのです。

もともと元本確保型ファンドは元本確保も保証していない

このように、債券を含め、将来の値動きが分からない金融資産に運用することにおいて、投資開始時に将来の受取額を確定するのは不可能です。これはどんな金融技術をもってしてもいかんともしがたい事実です。

こうしたこともあり、元本確保型ファンドの概要にはこのような記述がなされます。

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ファンドは〇〇社が発行する債券に高位に投資し、設定日から約〇年後の満期償還時の当ファンドの償還価額について、元本確保を目指します。
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あくまで元本確保を“目指す”もので、保証するものではないことがお分かりいただけましたでしょうか。

GCIアセット・マネジメント 太田 創

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太田 創
  • 太田 創
  • 株式会社GCIアセット・マネジメント
  • 執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)

関西学院大学卒。1985年、三菱銀行入行。1988年より約10年間、ロンドンおよびサンパウロで資金為替・デリバティブ等の運用、投資信託の管理業務に携わる。
その後、2000年からシティグループ(米)、UBS(スイス)、フィデリティ(米)において投資信託のマーケティング・商品企画を統括。
2015年に株式会社GCIアセット・マネジメントに移籍し、投資信託事業に従事。
主要な著書には、『ETF投資入門 』(日経BP 2008年)、『お金持ち入門』(実業之日本社 2015年 共著)などがある。