「子どもは何も分からないのだから、親がきちんと教え、言って聞かせねばならない」と思っていませんか。何でも教えてあげれば「しっかりしたお母さん」のように見え、自身の育児に安堵感も感じますよね。
一方で、「教え過ぎることの弊害」も知っておくと良いでしょう。親は子どもに教える必要はありますが、教え過ぎるがゆえに、子どもから奪ってしまうものもあるのです。そしてこれから人工知能が発達する時代では、教え過ぎは必ずしも正解とは言えなくなるでしょう。まずは具体例から見てみましょう。
学校に忘れ物をするのは悪いこと?
「教え過ぎの弊害」を実感するために、まずは2人の具体例をご紹介します。
小学生のAさんは、学校に忘れ物をしたことがありません。毎晩お母さんが「明日の用意は? 教科書は用意したの? 鉛筆は削った?」と声をかけてくれるからです。忘れ物をしないので、学校では授業に集中できます。忘れ物をしないと先生にも褒められるので、自慢の一つとなっています。
一方でBさんは、今日国語の教科書を忘れてしまいました。その日は先生に注意され、隣の子に机をくっつけて教科書を見せてもらいました。1冊の本を2人で共有するのでは内容が見えにくく、授業にあまり集中できませんでした。隣の席の友達も、嬉しそうではありませんでした。
家に帰り、「明日は忘れないようにしよう」と思います。「いつも寝る前に音読をして、そのまま机に教科書を置いてしまうから、宿題の後にすぐ音読をして、そのままランドセルにしまおう」と考えて、実行するようになりました。
Aさんの場合、表面上しっかりしていますが、全てお母さん主導です。一方でBさんは失敗してしまいましたが、自分で「忘れ物をしない」と決め、忘れないための工夫をし、行動をコントロールしました。こうした小さなことでも自分で決めたことを毎日実行すると、自信となります。
親としては子どもに失敗をさせたくないですし、学校でも良い印象を与えたいものです。しかし失敗から学ぶものは思った以上に大きく、また、子どもを伸ばしてくれるのです。