Aさんの親のように教え過ぎる場合、子どもは「受け身、純朴、言われた通りにしかできない、自分がやりたいことが分からない」ようになるでしょう。一方でBさんは「失敗の後に取るべき行動が分かる、自分の頭で考える、自制心がつく、自信がつく」ようになります。
そうはいっても、今の私たち親世代は「親は子どもにきちんと教えるべき」という概念を強く抱いており、そこからなかなか抜けきれません。今の祖父母世代では会社勤めの方が多く、言われたことを言われた通りやることが良いことでしたし、それでうまくいきました。
一方で増えているのが、「大人になっても自分が何をしたいのか分からない人」です。以前、子育ての専門家に「親が完璧だと、子どもは自分で考える必要がないのも一因です」と聞きました。上記の例を見ても、それは想像できます。
人工知能が台頭し、人間らしさが求められるこれからの時代には、子どもに教え過ぎることは必ずしも良いとは言えなくなるでしょう。
その子の成長に合わせ、教え過ぎない
子どもに教え過ぎてはいけないからと、急に教えないのもまた違います。教え「過ぎ」が良くないのであり、たとえば入学したばかりの小学1年生の子に学校の用意を1人でさせても、「教えてもらわなければ分からない」ので教えるべきでしょう。
幼児期も同じで、たとえば花の名前やお箸の使い方など「教えてもらわなければ分からないこと」もあれば、「ケガや病気、命の危険性があること」「他人や物を傷付ける危険性があること」もあります。こういったことは子どもが分かりやすいように、繰り返し言ったり、実際に見せて教えます。
一方で、子どもが自ら気付くのを待っていいこともたくさんあります。特に遊びの世界やしつけについてもそういうケースがあるものです。たとえば友達が泣いたり、味噌汁をこぼしたなどの失敗は学びの良い機会で、すぐに教えるのでなく「どうしたらいいと思う?」と聞くと、3歳児でも多くの答えを知っていることがあります。
学校の用意なども、慣れてきたら子どもに任せましょう。忘れ物をするのも、また一つの社会経験です。初めは教えても、少しずつ子どもにさせて最後まで責任を取らせることで、多くの学びを得るでしょう。
教わって育った親世代にとっては、教え過ぎないというのは辛いところですが、「この子はどう考えるかな?」という視点で見てみると良いでしょう。
宮野 茉莉子