「2000万円問題」に端を発した年金の問題ですが、昨今は物価高などによる将来への不安から、老後生活への関心が高まっています。「みんなはどれくらい年金をもらっているのか」など、自分の年金額が平均と比べて多いのか少ないのか、気になる方も多いようです。

年金は受け取り始める年齢によって金額が増減する制度があります。年金受給の開始時期を選ぶことにより、老後に受け取れる年金の総額に違いが出る可能性もあります。

そこで本記事では、老齢年金(国民年金・厚生年金)の平均月額についてお伝えし、記事の後半では、受給開始年齢を前倒し・後ろ倒しにできる「年金の繰上げ・繰下げ受給」を解説します。

1. 【2025年度】年金額は1.9%増額へ。実質は目減りも

2025年度の公的年金額は、前年度から1.9%の増額となりました。これは2023年度から続く3年連続の引き上げです。物価の上昇や賃金の伸びに合わせた調整であり、一見すると年金生活者にとって嬉しいニュースに見えます。

たとえば、2025年度の年金受け取りの例として、国民年金の満額(月額)は6万9308円となり、前年度より1308円増えました。また、厚生年金(夫が平均的収入で40年勤務、妻は専業主婦というモデル世帯)では、月額23万2784円と、こちらも約4400円の増額です。

しかし、この「1.9%増」は、実際には物価変動率(2.7%)や名目手取り賃金変動率(2.3%)には追いついておらず、「実質的な目減り」とも言えます。背景には、年金財政を持続可能にするための仕組み「マクロ経済スライド」の影響があります。

マクロ経済スライドとは、物価や賃金が上昇した場合でも、年金財政を支える現役世代の減少を考慮し、年金の伸び率を抑制する仕組みです。

2025年度は、このスライドにより0.4%分が名目手取り変動率から差し引かれ、実際の年金増加率は1.9%に抑えられました。このように、年金は名目上は増加しましたが、実質的な購買力はあまり上がっていないというのが現状です。