中国初の世界同時株安、そしてその後も不安定な相場環境が続いています。こうした環境下での投資信託選びについて、楽天証券経済研究所のファンドアナリスト、篠田尚子さんにお聞きしました。
不安定な相場環境で注目したいバランス型ファンド
――世界的な株価急落の後も不安定な株価動向が続いています。一方で、投資信託の人気動向を見ると、日本株のインデックス投信(中には、レバレッジをかけたものも)が上位にきており、リターンを得るチャンスだと判断している個人投資家も多いように見えます。不安定な相場環境下で、大ケガをせずに、アップサイドを狙うために少しずつ買っていくとすれば、どんな投資信託が適しているのでしょうか。
篠田:相場のボラティリティが高く、方向感をつかみにくい時ほど、相場環境に合わせて資産配分を柔軟に変更させるバランス型ファンドの本領が試されます。
――バランス型ファンドというのは、簡単に言うとどんな投資信託でしょうか。
篠田:バランス型ファンドとは、「株だけ」「債券だけ」といった1種類の資産だけではなく、複数の資産にバランス良く投資するタイプのファンドのことです。株と債券を組み合わせたもの、さらに不動産投信やコモディティといった資産まで組み入れるものなどもあります。
――バランス型ファンドというと、一昔前までは、あらかじめ資産配分(例:日本株20%、外国株20%、国内債券30%、外国債券30%)が決められていた記憶がありますが、それでも不安定な相場環境に対応できるのでしょうか。
篠田:従来のバランス型は、あらかじめ資産配分が固定されているものが主流でしたが、現在展開されている新種のバランス型ファンドは、相場環境に合わせて資産配分や投資先を柔軟に変化させ、基準価額の下落を抑える可変型が中心です。
リスク低減のための手段は、オルタナティブの組み入れや現金比率の引き上げなど、多岐にわたります。
――最近の株価下落の中でも頑張ったバランス型ファンドを教えてください。
篠田:世界的な株価下落に見舞われた8月、TOPIXは約7%、S&P500は約6%下落しました。1か月間の基準価額騰落率を、これら株価指数の下落幅の約半分、マイナス3%以内に抑えることができた以下のようなバランス型ファンドについては、リスクコントロールが働いたという「合格点」を付けられるでしょう。下記のファンドは、8月の基準価額の下落幅を3%以内に抑えることができたため、直近1年間の騰落率もプラス圏を維持しました。
こうしたバランス型ファンドの中から、販売手数料が無料のもの(ノーロード投資信託と言います)や信託報酬が低いものを選んで投資すると、費用を抑えて効率的に投資できると思います。
- ブラックロック・グローバル・フレキシブル・バランス・ファンド(ブラックロック)
- ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド(愛称:クアトロ)(ピクテ)
- コア投資戦略ファンド(切換型)(愛称:コアラップ)(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
- 三菱UFJ バランス・イノベーション(株式抑制型)(三菱UFJ国際投信)
- クルーズコントロール(DIAMアセットマネジメント)
- 投資のソムリエ(DIAMアセットマネジメント)
- GARSファンド(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
中小型株ファンドにも投資機会があるかもしれない
――バランス型ファンド以外で、篠田さんが個人的に注目されているファンドがあれば、ぜひ教えてください。
国内の中小型株を組み入れているファンドは、このタイミングで上手く取り入れていきたいところです。中小型株には内需型で外部環境の影響を受けにくく、かつ業績の良い銘柄も多く含まれています。ファンドによっては、昨今の株価調整局面を好機と捉えて積極投資を行う可能性があり、今後の運用に注目しています。
- 三井住友・中小型株ファンド(三井住友アセットマネジメント)
- 中小型株式オープン(愛称:投資満々)(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
- ひふみプラス(レオス・キャピタルワークス)
――確かに、中小型株を中心に投資するファンドの中にはエッジの立った投資をするものがありますね。今日はありがとうございました。