新年を迎えれば、翌年は2020年-二度目の東京オリンピック、となります。多くの人が楽しみにしていることでしょう。ただ、これから日本が直面するのはそうした明るい話ばかりではありません。

今後は日本の高齢化は進んでいきます。日本ではもともと高齢者が多くの金融資産を保有しています。その中で、認知症患者が増えていけば、投資判断の機会も減少し、結果、金融資産の流動性が低下していく可能性があります。そうした状況は、長期的には日本経済へのリスクマネーの供給が滞ることも考えられます。今回はファイナンシャル・ジェントロジーとも呼ばれる金融老年学について考えてみたいと思います。

ファイナンシャル・ジェントロジー(金融老年学)とは何か

慶應義塾大学のファイナンシャル・ジェントロジー研究センターによれば、「ファイナンシャル・ジェロントロジーとは、高齢者の経済活動、資産選択など、長寿・加齢によって発生する経済課題を、経済学を中心に関連する研究分野と連携して、分析研究し、 課題の解決策を見つけ出す新しい研究領域です。」としています。

定年退職後には現役世代と比べ、消費活動や投資行動も変わってくることは想像がつきます。加えて、これまで以上に長生きとなることで、それらのアクションもさらに変化しいてくる可能性があります。

高齢者が健康に問題なければ、本人のみならず、その家族も幸せであるかとは思います。ただ、皆必ずしもそうであるというわけにはいかないでしょう。

たとえば、金融資産を保有しながら認知症となり、その後金融資産を動かすことが実質的には難しい状況が発生してしまうと、金融の本来の機能である、リスクマネーを必要とする機能が一部不全に陥りかねません。

そうなる前に、何かの対応策を考えていく必要があります。それはファイナンシャル・ジェントロジーの役目の一つとも言えましょう。

2030年に認知症患者の金融資産が200兆円の衝撃

2018年8月28日に第一生命経済研究所から「認知症患者の金融資産 200 兆円の未来」が発表されました。