9. 住民税非課税世帯になることで「メリットがなくなる」制度もある?
住民税が課されない「非課税世帯」となることで、多くの支援や優遇措置を受けられることをご紹介してきました。
ただしその一方で、非課税であることによって利用しづらくなる制度や、効果が限定的になる控除もあります。
ここでは、非課税となることでかえって活用が難しくなる代表的な制度について見ていきます。
9.1 医療費控除
医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた際に、その支出分を所得税や住民税の計算から差し引くことができる制度で、税負担を軽減する効果があります。
しかし、住民税がすでに課されていない非課税世帯では、そもそも減税される税がないため、この控除の恩恵を受けることができません。
さらに、所得税の対象外となっている場合には、医療費控除を申告しても還付が発生せず、制度のメリットが実質的に受けられなくなります。
9.2 ふるさと納税
ふるさと納税は、寄付額のうち2000円を超える分が所得税や住民税から差し引かれる制度で、実質的な負担を抑えながら返礼品を受け取れる仕組みとして人気があります。
しかし、住民税が非課税となっている世帯では、控除を受けるための税額がそもそも存在しないため、寄付をしても控除が適用されません。
そのため、寄付した金額の全額が自己負担となり、返礼品を受け取るための費用がそのまま支出として残ることになり、節税のメリットは得られません。
9.3 「制度の恩恵」と「デメリット」を冷静に比較することが大切
非課税世帯になることで受けられる経済的な支援や優遇措置は数多くありますが、一方で、医療費控除やふるさと納税のように「利用しても恩恵を受けにくい制度」があることも見落とせません。
これまでそうした制度を積極的に活用していた方にとっては、非課税になることでかえって損をしてしまう可能性もあるのです。
10. 必要な制度を見落とさず、安心できる暮らしにつなげていこう
今回は冒頭で住民税非課税世帯について解説していきました。
その後、住民税非課税世帯を対象とした優遇制度について7つご紹介しました。
保育や高等学校など教育に関するものや住居や家賃、公共料金など生活に関するものなど、その種類はさまざまです。
住民税非課税世帯に該当することで多くのサポートが受けられ、メリットが多いようにも感じる方もいるかもしれません。
しかし一方で、住民税を納めていないことで利用できなくなる制度やサービスがあるのも事実です。
つまり、非課税=無条件に得するわけではなく、メリットとデメリットが混在しているという点にも注意が必要です。
制度を上手に活用するためには、まずは自分が対象かどうかを正しく把握すること、そして支援内容を理解し、自分の状況に応じて取捨選択していくことが大切です。
今回の情報をきっかけに、必要な制度を見落とさず、安心できる暮らしにつなげていきましょう。
参考資料
- 財務省「住民税について教えてください。所得税とはどう違うのですか?そもそも国税と地方税の違いはなんですか?」
- 港区「住民税(特別区民税・都民税)はどういう場合に非課税になりますか。」
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
- 厚生労働省「介護保険の1号保険料の低所得者軽減強化」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
- こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
- 厚生労働省「住宅確保給付金について」
- 内閣府「第6回 スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ 議事次第 日本放送協会 御提出資料」
荻野 樹