夏休みシーズン真っ只中の2025年8月、熱中症に気を付けている方も多いことでしょう。私たちは皆、できるだけ長く健康でいたいと願うものですが、平均寿命が延び続ける一方で、健康上の問題がない期間とされる「健康寿命」との差は無視できない課題です。

このギャップは、医療費や介護費の増加を招き、家計に大きな負担をかける可能性があります。特に、定年後の生活において、この経済的な不安は深刻なものとなりかねません。

総務省や厚生労働省の統計データは、年金生活を送るシニア世帯の多くが、毎月赤字の家計を貯蓄で補っている現実を物語っています。長生きするほど生活費はかさみ、さらに健康不安も増していくなか、いかにして経済的な安定を保つかという問題は、誰もが向き合うべき課題です。

この記事では、公的なデータに基づき、シニア世帯の貯蓄額や年金、そして家計の実態を多角的に分析していきます。

1. 無視できない【健康寿命と平均寿命】のギャップ

厚生労働省が発表している「令和5年簡易生命表」によると、現在の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳(いずれも2023年時点)です。

また、2025年1月に総務省が公表した「2024年(令和6年)労働力調査」によると、全就業者数6781万人のうち、65歳以上の就業者数は930万人と、前年に比べて16万人も増加しています。

このように、シニアになっても元気に働く方々が増えるなか、健康寿命は、男性72.57歳、女性75.45歳となっています(2022年時点)。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。

厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」

厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」

出所:厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」

ここで気になるのが、健康寿命と平均寿命の差です。

働くシニア世代を後押しするしくみは整いつつありますが、医療費や介護費などがかさむ世帯が増える時期でもあります。健康面での不安を感じることも増えるでしょう。

このような時期には、貯蓄を取り崩しながら年金生活を送る世帯も増えるかもしれません。そのため、貯蓄をしっかりと計画し、年金生活を安定させることが大切です。

次章から、70歳代世帯がどれくらい貯蓄しているのか、その実態を見ていきましょう。