3. 申請しないともらえない「仕事関連」の公的なお金 3選

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によれば、年齢階層別の平均給与は50歳代後半で男性712万円、女性330万円ですが、60歳代前半では男性573万円、女性278万円、さらに60歳代後半では男性456万円、女性222万円と大きく減少しています。

シニア層の就労を支援する制度は整備されているものの、60歳を境に収入が下がることは一般的で、再就職も容易ではありません。

そこで本章では、シニア世代の就労に関わる「申請しないともらえない公的支援金」を3つ紹介します。

3.1 1:再就職手当(65歳未満)

再就職手当は、早期の再就職を後押しする目的で設けられた制度です。

失業から再就職、または事業開始までの期間が短いほど、支給額が多くなる仕組みになっています。

  • 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
  • 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
  • 手当の額:就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数により下記のとおり給付率が異なる

再就職手当の金額は、所定給付日数の残日数によって決まります。

具体的には、所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合は残日数の60%、3分の2以上を残して再就職した場合は残日数の70%が支給されます。※1円未満の端数は切り捨てとなります。

参考として、下記の表を用いながら具体的なケースを確認していきましょう。

再就職手当の額

再就職手当の額

出所:厚生労働省「再就職手当のご案内」

【再就職手当の金額】ケース1

  • 基本手当日額:4000円
  • 所定給付日数:270日
  • 就職:受給資格決定日以後50日目
     
  • 基本手当の支給残日数は228日(待機期間が受給資格決定日を含めて7日となる)→給付率は70%
  • 再就職手当=4000円×228日×70%=63万8400円

【再就職手当の金額】ケース2

  • 基本手当日額:4000円
  • 所定給付日数:270日
  • 就職:受給資格決定日以後100日目
     
  • 基本手当の支給残日数は178日(待機期間が受給資格決定日を含めて7日となる)→給付率は60%
  • 再就職手当=4000円×178日×60%=42万7200円

再就職手当は、ハローワークに必要書類を提出することで受給できます。

申請方法は、窓口への持参または簡易書留による郵送で、提出時には以下の書類が必要となります。

  • ① 再就職手当支給申請書
  • ② 関連事業主に関する証明書
  • ③ 雇用保険受給資格者証
  • ④ 紹介証明書(給付制限の1か月以内に、職業紹介事業者の紹介で採用された方のみ)
  • ⑤ 失業認定申告書

中には事業主や職業紹介事業者に発行を依頼しなければならないものもあるため、再就職が決まったら早めに準備を始めることをおすすめします。

3.2 2:高年齢雇用継続基本給付

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方が引き続き就労し、賃金が60歳到達時と比べて減少した場合に支給される制度です。

  • 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
  • 支給要件:賃金が60歳時到達時の75%未満
  • 支給額:最高で賃金額の10%相当額(2025年4月より
  • 申請先:在職中の事業所を管轄するハローワーク

【早見表】高年齢雇用継続給付

【早見表】高年齢雇用継続給付

出所:厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」

なお、老齢年金を受給しつつ厚生年金に加入し、「高年齢雇用継続給付」を受け取る場合は、在職による年金の一部支給停止に加え、標準報酬月額の最大6%に相当する額も支給停止となるため、この点には注意が必要です。

【高年齢雇用継続給付の支給額&年金支給停止額の例】

以下は60歳到達時の賃金月額が30万円である場合の支給額の例です。※2025年4月1日以降に受給資格を満たした場合の支給額の例

1.支給対象月に支払われた賃金が26万円のとき
賃金が75%未満に低下していませんので、支給されません。

2.支給対象月に支払われた賃金が20万円のとき
低下率が66.67%で64%を超えていますので、支給額は1万4545円です。

3.支給対象月に支払われた賃金が18万円のとき
低下率が60%ですので、支給額は1万8000円です。

高年齢雇用継続給付は、ハローワークへの申請によって受け取れる給付金ですが、原則として事業主を通じて手続きを行います。

ただし、事業主が協力しないなど申請が進まない場合は、被保険者本人が直接提出することも可能です。

必要書類は以下のとおりです。

  • 高年齢雇用継続給付支給申請書
  • 払渡希望金融機関指定届
  • 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
  • 高年齢雇用継続給付受給資格確認票
  • 支給申請書・賃金証明書の記載内容を確認できる書類

基本的には事業主が用意してくれるため、まずは就職先に手続きを進める依頼をすると良いです。

詳細は厚生労働省「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」を確認してみてください。