5. 「年金の上乗せ」で毎月分配型投資信託はNG
「年金の上乗せとなる収入を得られる」というセールストークを受けて、毎月分配型投資信託を保有する年金受給者の方は少なくありません。
毎月分配型投資信託とは、その名の通り毎月決算を行い、収益の一部を分配金として投資家に支払う投資信託です。一般的な投資信託が年1〜2回の決算なのに対し、より頻繁に現金収入が得られる特徴があります。
安定した定期収入があるのは魅力ですが、毎月分配型投資信託はおすすめしません。その理由は以下のとおりです。
- 複利効果が働きにくい
- 元本払戻しのリスクがある
- コストが高い
毎月分配金を受け取ることで、本来であれば再投資されて複利効果を生む資金が手元に出てしまいます。複利効果が減少することで、運用成果にマイナスの影響を与えてしまうのです。
また、毎月分配型投資信託では運用成績が悪い時期でも分配金を維持するため、元本を取り崩して支払うケースがあり得ます。これは実質的に自分のお金が戻ってきているだけで、資産は目減りしています。
毎月分配型投資信託は、一般的に信託報酬(運用管理費用)が高く設定されている点も問題です。年間1〜2%程度のコストがかかる商品もあり、資産を増やすどころか減っていた、というケースは十分にあり得るのです。
これらの理由から、毎月分配型投資信託は多くの方にとって不適です。運用しながら取り崩したい場合は、低コストのインデックスファンドを選び、必要な時に必要な分だけ売却する方が、税務効率と複利効果の観点から有利です。
6. まとめにかえて
年金だけで、基礎生活費をカバーするのは難しいかもしれません。追加の収入源があれば生活が楽になりますが、毎月分配型投資信託を選ぶのは避けましょう。
毎月分配型投資信託は運用効率が悪いだけでなく、元本の払戻しリスクがあります。また、高コストで資産を減らしてしまう可能性があるため、注意が必要です。
合理的に年金の上乗せとなる収入を確保するには、低コストのインデックスファンドを活用し、必要時に一部売却する方法がおすすめです。適切な運用戦略で、安心できる老後生活を実現しましょう。
参考資料
柴田 充輝