3. 専業主婦が失う年金収入はどれくらい?
専業主婦世帯は、現行制度では生涯受け取れていた遺族厚生年金が5年間の有期給付となることで、生涯収入が大きく変わります。加えて、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻に支給される「中高齢寡婦加算」も見直しが検討されており、ゆくゆくは廃止される見込みです。中高齢寡婦加算がなくなってしまうと、さらに収入は減ってしまう見込みです。
果たして、専業主婦が制度改正によって失う年金収入はどれくらいなのでしょうか。以下の専業主婦世帯を例に、仮に中高齢寡婦加算が廃止されたとして、現行制度と改正後の制度で受け取れる生涯の遺族年金額を比較してみましょう。
- 世帯情報
・妻:40歳、子なし、専業主婦。
・夫:42歳、会社員。厚生年金加入期間20年(240ヵ月)。平均標準報酬額は44万円。
・制度改正後に夫が死亡したと仮定。
3.1 遺族厚生年金
- 現行制度:1357万円
- 新制度:353万円
- 差額:△約1004万円
3.2 中高齢寡婦加算
- 現行制度:
- 新制度:0円(完全廃止の場合)
- 差額:△約1560万円
3.3 合計
- 現行制度:約2917万円
- 新制度:約353万円
- 差額:△約2564万円
※遺族厚生年金の計算式は以下のとおり。
- 遺族厚生年金=老齢厚生年金額(報酬比例部分)×3/4
- 老齢厚生年金額(報酬比例部分)=平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間(2003年4月以降に厚生年金保険に加入している場合。被保険者期間が300月に満たない場合は300月とみなす。)
※新制度の5年の有期給付については「有期給付加算」として、現行の1.3倍の金額を遺族厚生年金として支給する。
将来的に受け取れる遺族年金受給額には、2000万円以上もの差が生まれてしまいます。本来受け取れるはずと考えていたお金が2000万円以上なくなってしまうことに、ショックを受ける人も多いのではないでしょうか。
新制度では、5年の給付が終わった後も、収入が一定額以下であれば、年金を継続して給付するとしています。たとえば、単身の場合では「就労収入で月額約10万円(年間122万円)以下」である場合に年金が全額継続で給付されます。また、収入が一定額であっても、金額が調整されて継続給付されるケースもあります。
とはいえ、収入が増えていけば年金の支給はいずれ停止されるため、新制度で老後まで遺族年金を受給し続けるのは限りなく厳しいでしょう。
制度の改正により、老後生活のプランを根本から見直さなければならない人もいるのではないでしょうか。共働きが厳しいという世帯ができる対策について、次章で解説します。