2. 遺族年金改正の影響がある世帯・ない世帯
遺族年金の改正により、どのような世帯が影響を受けるのでしょうか。影響のある世帯とない世帯を見てみましょう。
《遺族年金改正》影響がある世帯/影響がない世帯

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」、厚生労働省「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の概要」をもとに筆者作成
2.1 影響がある世帯・大きい世帯
- 子のいない60歳未満の妻がいる世帯
- 子のいない60歳未満の夫がいる世帯
2.2 影響がない世帯・限定的な世帯
- 18歳未満の子がいる世帯
- 60歳以上ですでに遺族年金を受給する世帯
影響が大きいのは、子どものいない60歳未満の妻がいる世帯です。もし夫が亡くなり妻が遺族年金を受給する場合、これまでは30歳以上であれば無期給付を受けられました。しかし、2028年からは給付期間が5年間に短縮されてしまいます。
とくに専業主婦世帯は、これまで生涯続くとされた収入がわずか5年間しか受け取れなくなるため、遺族年金以外の収入源が必要になります。
一方、子のいない60歳未満の夫がいる世帯は、制度改正をプラスに捉えられるでしょう。これまで最低でも55歳にならないと受けられなかった遺族年金が、60歳未満であれば5年は受け取れるようになるためです。もし妻が亡くなり仕事ができなくなっても、5年間は遺族年金により収入を得られます。
影響がない世帯は、18歳未満の子どもがいる世帯や、60歳以上ですでに遺族年金を受給する世帯です。18歳未満の子どもがいる世帯は、子どもが18歳になるまでは現行制度のとおり、遺族基礎年金と遺族厚生年金を併給できます。子どもが18歳を迎えた年度末に遺族基礎年金の支給が終了すると、給付期間が5年間に制限されますが、お金のかかりやすい子育ての時期は年金を受給できるため、影響は少ないでしょう。
また、すでに遺族年金を受給する60歳以上の人については、制度変更の影響を受けません。引き続き生涯にわたって遺族年金を受給できます。
年齢や立場によって、遺族年金制度の改正による影響は異なります。次章では、とくに影響の大きい専業主婦世帯への影響について、さらに見ていきましょう。